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[翻訳記事] ゲーム最初の難問を解く

原文

この文章はChannel Fireballに掲載されたSolving the Very First Decision of the Gameの和訳である。原文の掲載は2017年7月4日だった。著者はNico Bohny氏。

要するに、先手・後手、どちらが有利かという話。続きはこちら

以下訳文。


公平を期すために述べると、このタイトルが当てはまるのは、あなたのゲームの半分だけだ。

先手か後手か? それがこの記事で取り上げたい問題だ。 私自身は頻繁に後手を選ぶが、殆どのプレイヤーはこの問題をさほど深く考えていないように思える。

ではいくつかの練習問題から始めよう。ミラー・マッチをしていて、デッキは60枚すべてが分割カードだ。 問題は、あなたは先手と後手どちらを選ぶべきなのか、そしてそれはなぜか、である。

  1. デッキがすべて《沼/Swamp》と《オリヴィアの血誓い/Olivia’s Bloodsworn》の分割カードである場合。先手と後手どちらを選ぶべき?
  2. デッキがすべて《山/Mountain》と《ショック/Shock》の分割カードである場合。先手と後手どちらを選ぶべき?
  3. デッキがすべて《森/Forest》と《灰色熊/Grizzly Bears》の分割カードである場合。先手と後手どちらを選ぶべき?

(訳注: 第1問は原文だと《島/Island》と《蒸気の精/Vaporkin》だったが、コメント欄によると誤りとのこと)

Olivia’s Bloodsworn / オリヴィアの血誓い (1)(黒)
クリーチャー - 吸血鬼(Vampire) 兵士(Soldier)
飛行
オリヴィアの血誓いではブロックできない。
(赤): 吸血鬼(Vampire)1体を対象とする。ターン終了時まで、それは速攻を得る。
2/1

Shock / ショック (赤)
インスタント
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。ショックはそれに2点のダメージを与える。

Grizzly Bears / 灰色熊 (1)(緑)
クリーチャー - 熊(Bear)
2/2

この記事の後半で解答を読むことができる。 注意しておくが、この問題は見た目ほど優しくない。

近年における変更

私はインベイジョンが出た頃に競技マジックを始め、シールドやドラフトを好んでプレイしていた。 私は構築戦もプレイしていたが、当時の私のデッキはドラフトデッキのようなものだった。

かつて、シールド戦では後手を選ぶのが常識だった。 ドラフトにおいても、我々は時折後手を選んでいた。(メルカディアン・マスクスのドラフト以降の話だが。) スタンダードでも、後手を積極的に選びたくなるようなデッキを数多く作ってきた。

現在のドラフトにおいて、99%のプレイヤーにとって最初にドローできるかどうかは最早関心事ではない。 シールドにおいてさえ、殆どのプレイヤーが後手を避けるべきだと主張している。 構築線では、後手を選ぶことは話題にも上がらない。

ここ数年で何が変わったんだろうか。

カードパワーのインフレ

クリーチャーはより強力になった。一方で呪文、特に除去呪文は弱体化している。

クリーチャーは通常先手にとって有利なカードである。 なぜなら、2マナクリーチャーで攻撃する際、3マナクリーチャーを相手にするより2マナクリーチャーを相手にするほうがマシだからだ。 また、先手で2ターン目にクリーチャーを出せなかった場合でも、後手で2ターン目にクリーチャーを出せない場合よりはずっと被害が少ない。

後手のクリーチャーを有利にするのはリソースの交換だ。 その場合テンポはそこまで重要でなく、後手のプレイヤーは1枚手札を多く引いているからである。

督励のような攻撃的なクリーチャーの能力は、そのリソースの交換をしづらくするだろう。 その場合、除去に頼らざるを得ない。 しかし最近の除去は極めて重いので、序盤のクリーチャーに干渉することは難しいだろうし、しばしばその高速な怪物に殴り殺されることになるだろう。

リミテッドにおいてはクリーチャーが重要なので、したがってあなたは先手をより多く選ぶべきだということになる。

マリガン時の占術ルール

最初にドローできることは、マリガンに対する保険のような役割を果たしていた。 今では代わりに、マリガン後に占術できる新ルールが保険の役割を果たしている。

5枚までマリガンすることは少ないので、その分自由度が減ることも少ない。 アグロデッキは手札が6枚か7枚あれば問題なく動作するし、占術は足りないパーツを探すのに役立つ。 ミッドレンジでは強力な呪文を唱えるために多くの土地が必要なので、手札が7枚であることはより重要になる。

プレインズウォーカーの存在

プレインズウォーカーは神話レアなので、それがレアだったローウィンの頃のように頻繁に見かけることはないだろう。 しかし、プレインズウォーカーがゲームのテンポに与える影響は大きい。 プレインズウォーカーを着地させる盤面はできるだけ安定したものであるべきであり、ここでも先手が有利だ。

WotCはどのように改善できるか?

私はゲームデザイナーではないが、少し考えてみよう。

新能力語・補償(Compensate) : もしあなたが後手であれば、あなたは補償を得る。

開発部の新たな信仰/Renewed Faith in R&D (2)(白)
インスタント
補償 - あなたは6点のライフを得る。あなたが後手である場合、代わりにあなたは8点のライフを得る。
サイクリング (1)(白)
補償 - あなたが~をサイクリングしたとき、あなたは2点のライフを得てもよい。あなたが後手である場合、代わりにあなたは4点のライフを得てもよい。

常に列の最後にいるもの、悲しいパンダ/Sad Panda, Always Last Bear in the Row (1)(緑)
伝説のクリーチャー - 熊
補償 - あなたが後手であるかぎり、~は+0/+2の修整を受けるとともに、店のクーポン券を得る。
2/2

(訳注: サウスパークネタっぽいがよくわからない。)

愉快な警察官/Fun Police Officer (1)(赤)
クリーチャー
先制攻撃
補償 - あなたが後手であるかぎり、~は速攻を持つ。
2/1

偉大なる取り消しをもう一度/Make Cancel great again (1)(青)(青)
インスタント
呪文1つを対象とし、それを打ち消す。
補償 - あなたが後手であるかぎり、あなたが~を唱えるためのコストは(1)だけ小さくなる。

貪欲なる死のネズミ/Ravenous Rats of Death (1)(黒)
クリーチャー - ネズミ
~が戦場に出たとき、プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは手札を1枚捨てる。
補償 - あなたが後手であるかぎり、~は絆魂と接死を持つ。
1/1

こんな感じでわかっただろうか。

「先手か後手か」という問題を興味深いままにできるので、こういった調整をやりすぎる必要はない。しかし、コモンにこういうサイクルがあったり、構築戦向けのレアがこういう能力を持っていると、MTGはもっと面白くなるんじゃないか。(構築戦ではしばしばダイスロールで勝敗が決まってしまう。)

なぞなぞの時間

さて練習問題の解答を述べていこう。

第1問

これは比較的簡単。常に先手でプレイすべきだ。4枚まで土地を伸ばしつつ、毎ターン可能な限り《オリヴィアの血誓い/Olivia’s Bloodsworn》を出していこう。簡単に勝利できる。

第2問

対戦相手を倒すためには10回《ショック/Shock》を唱える必要がある。効率を最大にするためには、2枚の土地を置く必要がある。結果的に、カードは12枚必要だ。12枚のカードにアクセスできるようになるのは、先手であれば6ターン目、後手であれば5ターン目だ。

ここで問題は、後手の場合3枚目の土地が必要になるということだ。なぜなら土地を2枚しか出さない場合、5ターン目までに唱えられるショックは9枚だけだからである。

従ってこの問題でも先手が有利となる。

《ショック/Shock》を《稲妻/Lightning Bolt》に変えた場合、より明白に先手有利になる。

逆に《ショック/Shock》を《双雷弾/Twin Bolt》に変えると、今度は後手が有利になる。

第3問

この問題は信じられないほど簡単に見えるが、最も複雑だ。殆どのプレイヤーは、この問題を3レベルに分けて解決する。多くのプレイヤーはレベル1にしかたどりつけないだろう。

レベル1

後手を選ぶべきだ。なぜなら、《灰色熊/Grizzly Bears》は戦闘で次々に相討ちになるからである。そのため1枚多くの《灰色熊/Grizzly Bears》を持っている方が勝つ。

レベル2

仮に追加の《灰色熊/Grizzly Bears》を持っていても、相手が次のターンにプレイする《灰色熊/Grizzly Bears》にブロックされ、結局相討ちになることになる。

結局《灰色熊/Grizzly Bears》の攻撃は1回も通らない。結果的に勝負は後手のライブラリー切れで決着するはずだ。つまり、先手が必勝ということになる。

レベル3

間違っている。もし双方のプレイヤーが最適な手順を知っている場合、後手が必勝になる。

もし相手が初手をキープした場合、あなたはマリガンをすればよい。 この場合、ライブラリー切れで負けるのは先手になる。

もし相手がマリガンをした場合、それに付き合って手札を0枚にしてはいけない。その場合の正解はキープだ。 こうなればあなたは相手より2体多い《灰色熊/Grizzly Bears》を持っていることになる。 そのうち片方は相手がドローした《灰色熊/Grizzly Bears》と相討ちになるが、1体ぶんの攻撃は本体に通ることになる。グッド・ゲームだ。

ボーナス・レベル

まてまて、先手は絶対に勝てないのか? いや、いつだって抜け道はある。2枚の《探検/Explore》だ。

まとめ

この手の問題が好きなら、以下も考えてみてほしい。

  • 《血の署名/Sign in Blood》と《金属モックス/Chrome Mox》
  • 《賞罰の天使/Angel of Sanctions》と《霧覆いの平地/Mistveil Plains》
  • 《電結の荒廃者/Arcbound Ravager》と《ミシュラの工廠/Mishra’s Factory》
  • 「海賊パッチーズ/Patches the Pirate」(訳注: ハースストーンのカード)とランダムな8枚のカード

面白い問題を思いついたら、気軽に(訳注: Channel Fireballの)コメント欄に投稿してほしい。

この記事の第1回を楽しんでもらえたなら幸いだ。第2回は、以下の内容にする予定だ。

  • MTGと他のカードゲーム、とくにハースストーンとの比較
  • 補償能力の別のかたち
  • リミテッドや構築で、後手を選ぶかどうかの判断基準