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[翻訳記事] The Deck

原文

この文章は海外公式サイト (DailyMTG)に掲載されていたThe Deckの和訳である。原文の掲載は2014年2月17日だった。

初心者向け記事であるLevel One、Mike Flores氏版の第4回。


高速で熱狂的なものであっても低速でテクニカルなものであっても、あなたがどのようなスタイルでプレイしたいのであれ、安定して相手を倒す最も確実な方法はカード・アドバンテージの獲得競争で相手を支配することである。 あなたのプレイスタイルを問わず、あらゆる種類のMTGのカードをデッキに混ぜ込むことができるし、そうすべきだ。 単体に影響を及ぼすカード・ロックカード・ドローおよびカードを無効化するもの、あらゆる種類だ。 もし適切な混合物を作ることができれば、細心のドローと完璧なプレイングに集中することができる。

Brian Weissman

Level Oneへようこそ。

ここ数回に渡り、成功したMTGの競技プレイヤーが良い結果を計画しそして達成するための、幾つかの基本原則についてまとめ始めている。 ここまでの内容をレビューしてみよう。

  • 戦略。特定の予想可能な結果を得るために、特定の 順序 で行動しようという概念だ。
  • 複数の戦略。あなたが 真に 行うべきことは、対戦相手より先にゲームを成功に終わらせるという発想を含んでいる。
  • カード・アドバンテージ。MTGで最も重要かつ最も根本的な基礎概念の1つである。どのような方法で得たにせよ、カードが増えれば選択肢が増え、対戦相手より優位になる可能性が高くなるということである。

今週は、MTGの歴史上もっとも重要なデッキの1つを見るために、これら3つのレッスンをまとめることにする。 このデッキは巨大な学派を生み出した。そして最終的には、ゲームの歴史におけるすべての主要な勝利のうち、おおよそ1/2から1/3を生み出したのだ。

準備はいいだろうか?

The Deck

土地 (21)

  • 3x 《City of Brass》
  • 4x 《島/Island》
  • 1x 《Library of Alexandria》
  • 3x 《平地/Plains》
  • 1x 《Plateau》
  • 2x 《Strip Mine》
  • 4x 《Tundra》
  • 1x 《Underground Sea》
  • 2x 《Volcanic Island》

クリーチャー (2)

  • 2x 《セラの天使/Serra Angel》

呪文 (37)

  • 1x 《Ancestral Recall》
  • 1x 《Black Lotus》
  • 1x 《Braingeyser》
  • 2x 《対抗呪文/Counterspell》
  • 1x 《Demonic Tutor》
  • 4x 《解呪/Disenchant》
  • 2x 《破裂の王笏/Disrupting Scepter》
  • 1x 《Ivory Tower》
  • 1x 《ジェイムデー秘本/Jayemdae Tome》
  • 4x 《マナ吸収/Mana Drain》
  • 1x 《Mind Twist》
  • 2x 《Moat》
  • 1x 《Mox Emerald》
  • 1x 《Mox Jet》
  • 1x 《Mox Pearl》
  • 1x 《Mox Ruby》
  • 1x 《Mox Sapphire》
  • 1x 《Recall》
  • 2x 《赤霊破/Red Elemental Blast》
  • 1x 《新たな芽吹き/Regrowth》
  • 1x 《太陽の指輪/Sol Ring》
  • 4x 《剣を鍬に/Swords to Plowshares》
  • 1x 《Time Walk》
  • 1x 《Timetwister》

サイドボード (15)

  • 2x 《血染めの月/Blood Moon》
  • 3x 《赤の防御円/Circle of Protection: Red》
  • 2x 《支配魔法/Control Magic》
  • 1x 《対抗呪文/Counterspell》
  • 1x 《破裂の王笏/Disrupting Scepter》
  • 2x 《神への捧げ物/Divine Offering》
  • 1x 《ジェイムデー秘本/Jayemdae Tome》
  • 1x 《Moat》
  • 1x 《平地/Plains》
  • 1x 《トーモッドの墓所/Tormod's Crypt》

この名作はBrian Weissman作の、The Deckである。おおよそ20年前のデッキだ。

The Deckは直感的ではないので、しばらく時間を使い、これが何であるかを説明する。

The Deckの目的は単純である。 死なないことだ。 この目的のために相手の攻撃を鈍らせるカードが多く投入されている。《象牙の塔/Ivory Tower》によるライフ回復もそうだ。 そして、あらゆる手段によるクリーチャーへの防御もそれに当てはまる。ここには俊敏な《剣を鍬に/Swords to Plowshares》から、より重いが効果が永続する《Moat》まで含まれている。

The Deckは、カードアドバンテージそれ自体を目標に掲げた、MTGではじめての幅広く革新的なデッキだった。例えば《Moat》は、好きなだけの地上クリーチャーを足止めすることができる。ダメージに対抗するカードやクリーチャーに対抗するカードが稼いだターンすべてで、The Deckは《Braingeyser》や《ジェイムデー秘本/Jayemdae Tome》を用いて追加のカードを引く時間があった。

カード・アドバンテージは2つの方法で発揮された。Brianはカードを引くだけではなく、対戦相手の手札を攻撃することもした。《精神錯乱/Mind Twist》は1枚で1対多交換を実現するカードであり、前回挙げた《精神腐敗/Mind Rot》の例をかすませてしまうほど強力だ。そして数ターンかけると、《破裂の王笏/Disrupting Scepter》は相手の手札複数枚と交換できてしまう。

The Deckがこれまで3回のレッスンで学んだ原則を行動に起こし、それにより重要かつ画期的で、非常に影響力のあるインセンティブを生み出していることを憶えていてほしい。

戦略と手順

The Deckの主な勝利方法は《セラの天使/Serra Angel》による攻撃である。 特筆に値するのは、《セラの天使/Serra Angel》が2つの役割を持つカードであることだ。 パワー4で攻撃できるというだけではなく、警戒と飛行を持つので《Moat》を飛び越えてくる小型の飛行クリーチャーをブロックできるのである。

さて、デッキ……じゃなかった、The Deckの中に、このようなクリーチャーは2枚しか入っていない。 Brianは彼のカードを特定の手順でプレイする必要があった。

ゲームの序盤は、高速なクリーチャーを《剣を鍬に/Swords to Plowshares》で捌き、《Moat》や他の鍵になるパーマネントのために盤面を構築していく。

彼はおそらく《精神錯乱/Mind Twist》を見つけるだろう。もしかしたら《Demonic Tutor》で見つけてくるかもしれない。そうしたなら《Mana Drain》や《Black Lotus》を使い、《精神錯乱/Mind Twist》を撃ち放つ。 その後、うまくいけば《破裂の王笏/Disrupting Scepter》を出せるだろう。

The Deckの計画は、戦場に多くの機材を用意することだ。 《破裂の王笏/Disrupting Scepter》によって対戦相手の手札を空にし、ソフト・ロックをかけることが狙いなのだ。 まだ足りないって? 彼は今度は《セラの天使/Serra Angel》をプレイしただろう。そして5回も殴ればうまくいく。

Brianは極めて慎重に自身の手順を進める必要があった。 もし《セラの天使/Serra Angel》をプレイするのが早すぎれば、それは敵の《対抗呪文/Counterspell》や《剣を鍬に/Swords to Plowshares》の餌食になるかもしれない。 《セラの天使/Serra Angel》は2枚しかないので、不用意に扱うことはできないのだ。 《破裂の王笏/Disrupting Scepter》は相手をダウンさせたままにするには良いカードだ。 しかし、大量の地上クリーチャーで殴られている状態で、対戦相手の手札を1枚ずつ落とすために毎ターン3マナ支払うのは、彼の好みではないだろう。 Brianはまず、自分のライフを安定させるためにクリーチャーへの防衛手段を使用したいと思っただろう。

同時に、脅威の阻止とカード・アドバンテージの獲得に専念した防御的な 戦略 を取ることで、Brianはデッキ構築に大きな自由度を得ている。あなたがこれまで見てきたような多くのデッキと異なり、彼のデッキにおいてクリーチャーに割かれているスペースはほとんど無い。このことは巧妙に、除去呪文への耐性につながっている。もしあなたの手札が《破滅の刃/Doom Blade》でいっぱいであっても、おそらくそれを使う対象はどこにも存在しないだろう。そして《破滅の刃/Doom Blade》が機能するような状況になったときには……あなたはディスカード・ロック地獄にいるんじゃないだろうか。 相手がクリーチャーであなたを殺そうとしているのに《破滅の刃/Doom Blade》を使えないなんて、君らしくもないね。

『対戦相手よりも先にゲームを成功で終了させる』

Brianのデッキは、速度に優れたものでは決してない。

今日のモダン環境では、あなたがDuels of Plainswalkersで慣れ親しんだカードだけを使って、 3 ターンキルを行うことができる。

  1. 1ターン目: 《山/Mountain》。《ゴブリンの先達/Goblin Guide》。攻撃して2点。残り18点。
  2. 2ターン目: 《ぐらつく峰/Teetering Peaks》。2枚目の《ゴブリンの先達/Goblin Guide》。攻撃して6点。残り12点。
  3. 3ターン目: 《山/Mountain》。《火花の精霊/Spark Elemental》。攻撃して7点。残り5点。《稲妻/Lightning Bolt》。残り2点。《溶岩の撃ち込み/Lava Spike》。残り-1点。

「複数の戦略」で私が述べたガイドラインは「できるだけ早く勝利しろ」では 決して ない。「対戦相手よりも早く勝利しろ」である。相手のデッキが4マナ以上の厄介なカードでいっぱいの場合、《ゴブリンの先達/Goblin Guide》による3ターン・キルによって、相手が意味あることを何もしないうちに、相手を倒せるだろう。

このように、対戦相手よりも早くゲームを成功で終了させる1つの方法が、対戦相手の20点目のライフポイントを迅速に焼き尽くしてしまうことなのは間違いない。《稲妻/Lightning Bolt》の1撃1撃でターンを削っていくのだ。 Brianは、対戦相手の手が届かなくなるまで、ゲームを延ばさなければならなかった。

自分がBrianであると想像してみてほしい。手札は7枚で、《象牙の塔/Ivory Tower》に守られている。

速い赤の対戦相手があなたを殺そうとするのを、あなたは難しくしている。(《象牙の塔/Ivory Tower》1回ぶんであなたのライフは23点になり、3ターン・キルの圏外になってしまう。) しかしそれだけではない。実際のところ、ある意味であなたはカード・アドバンテージ獲得シナリオに入っているのだ。( 《象牙の塔/Ivory Tower》で毎ターン3点回復できるなら、《稲妻/Lightning Bolt》や《溶岩の撃ち込み/Lava Spike》を毎回無効化しているようなものである。 )

カード・アドバンテージ

カード・アドバンテージこそThe Deckのバックボーンであり、他との差別化要因である。クリーチャー除去によって稼がれた時間は、より長い時間・より多くの土地へと変換される。そして多くの土地のタップはカード・ドローの神への捧げ物となる。 前回の記事で、追加のカードを引くことによって、いかにしてより多くのドラゴンを《殺害/Murder》できるか説明した。 Weissmanの全盛期においてもこのことは同じだ。 《Moat》により複数の地上クリーチャーを足止めし、《Ancestral Recall》を複数の《剣を鍬に/Swords to Plowshares》に交換して個別に交換する。これらはどちらも、カード・アドバンテージを稼ぎ、ゲームを長引かせるやり方だ。

2014年の今から見ると、Weissmanのカードの何枚かは無骨で古臭いものに見えるだろう。しかし彼の、ゲームを引き伸ばし、クリーチャーから身を守り、カード・アドバンテージにおける優位を利用するという考えは、20年近くの間トッププレイヤーを導いてきた。

ちょうど数週間前、ルーキー・オブ・ザ・イヤーでもある有名プレイヤー・Alexander Hayneは、白青コントロールデッキでグランプリに優勝した。Brian Weissmanの遺産の、2014年における継承者というわけだ。

アゾリウス・コントロール by Alexander Hayne

土地 (27)

  • 4x 《アゾリウスのギルド門/Azorius Guildgate》
  • 4x 《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
  • 5x 《島/Island》
  • 3x 《変わり谷/Mutavault》
  • 5x 《平地/Plains》
  • 4x 《欺瞞の神殿/Temple of Deceit》
  • 2x 《静寂の神殿/Temple of Silence》

クリーチャー (1)

  • 1x 《霊異種/Aetherling》

呪文 (32)

  • 2x 《アゾリウスの魔除け/Azorius Charm》
  • 4x 《拘留の宝球/Detention Sphere》
  • 4x 《解消/Dissolve》
  • 3x 《太陽の勇者、エルズペス/Elspeth, Sun's Champion》
  • 4x 《思考を築く者、ジェイス/Jace, Architect of Thought》
  • 4x 《今わの際/Last Breath》
  • 4x 《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation》
  • 4x 《至高の評決/Supreme Verdict》
  • 3x 《中略/Syncopate》

サイドボード (15)

  • 4x 《テューンの大天使/Archangel of Thune》
  • 3x 《闇の裏切り/Dark Betrayal》
  • 3x 《反論/Gainsay》
  • 1x 《好機/Opportunity》
  • 4x 《万神殿の兵士/Soldier of the Pantheon》

ほぼすべてのカードが防御的であり、そしてそのほとんどがカード・アドバンテージの獲得を同時に行う。

  • 《アゾリウスの魔除け/Azorius Charm》: 攻撃クリーチャーに対処し、ときにライフを回復する。
  • 《拘留の宝球/Detention Sphere》: (1つまたはそれ以上の数の)問題あるパーマネントに対処する。
  • 《解消/Dissolve》: 脅威になるカードの殆どを止める。
  • 《今わの際/Last Breath》: 小さくて問題になるクリーチャーに対処する。
  • 《スフィンクスの啓示/Sphinx’s Revelation》: ライフを回復する。
  • 《至高の評決/Supreme Verdict》: 複数のクリーチャーに対処する。
  • 《中略/Syncopate》: 脅威となるカードを止め、わずかにマナ・アドバンテージも期待できる。
  • 《思考を築く者、ジェイス/Jace, Architect of Thought》: 攻撃クリーチャーのパワーを下げることで攻勢を鈍らせる。
  • 《太陽の勇者、エルズペス/Elspeth, Sun’s Champion》: 大きなクリーチャーを破壊する。またはブロッカーを提供する。
  • 《霊異種/Aetherling》: 攻撃した後でも自身をリセットしてブロックに回れる (《セラの天使/Serra Angel》みたいだ)。

すばらしくないだろうか?

メイン・デッキにあるカード、そのすべてに防御的な機能がある。《スフィンクスの啓示/Sphinx’s Revelation》にさえだ! このデッキの「脅威」であるカードは《霊異種/Aetherling》と《太陽の勇者、エルズペス/Elspeth, Sun’s Champion》だが、これらはともに、攻撃にも防御にも回れる(ときには同時に行うことができる)カードだ。

さらに、これらのカードの多くがカード・アドバンテージを稼ぐ機能を持っているので、Weissmanもニッコリだ。 《スフィンクスの啓示/Sphinx’s Revelation》はカード・アドバンテージの獲得と防御を同時に行う、典型的なWeissmanカードの一種だ。《思考を築く者、ジェイス/Jace, Architect of Thought》はカード・アドバンテージ・エンジンであると 同時 に、防御的で厄介なストッパーでもある。これは《太陽の勇者、エルズペス/Elspeth, Sun’s Champion》も同じだ。

あとがき

私がはじめてこのThe Deckについての記事を読んだのは1990年代なかばのことだ。 私がそれまで使っていた、焦点が定まっておらず戦略的でもないごった煮デッキよりも、クリーチャーがいない(または極めて少ない)Weissmanが使うようなデッキのほうが優れているというアイデアに魅了された。 「相手を倒す最も確実な方法」についてのWeissmanの語りによって、経験は少ないが熱狂的なプレイヤーだった私は、新規な方向にのめり込んでいったのだ。 そのような考え方は、それ自体視野を狭めるものであった。

今私が知っていること、それはあなたに伝えなければならないことでもある。 それは、遅くてクリーチャーの少ないデッキというのは、いくつかある成功しうる戦略のうち1つにしかすぎないということだ。 それは、アイデアとして他のものよりも優れていたり、劣っていたりするものではない。 他より優れたカードや戦略が何であるかは、要約されたアイデアよりもむしろフォーマットによって決定される。 それらのアイデアにできることは、あなたに新しいツールを与えることである。 The Deckについて読んだことで、(新しい)プレイヤーが異なった考え方や異なったプレイングを学んでいることを願う。 そして、その知識があなたのプレイを豊かにし、何かを生み出す助けになることを願っている。

愛をこめて。

Mike