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[翻訳記事] カード・アドバンテージ

原文

この文章は海外公式サイト (DailyMTG)に掲載されていたCard Advantageの和訳である。原文の掲載は2014年2月10日だった。

初心者向け記事であるLevel One、Mike Flores氏版の第3回。


Rutgerが標準的な《ネクロポーテンス/Necropotence》デッキを使用していて、Virginiaは赤白の防御的なデッキを使用しているとする。 Rutgerのデッキはカード・アドバンテージに基づいて設計されており、《トーラックへの賛歌/Hymn to Tourach》・《惑乱の死霊/Hypnotic Specter》・《ネビニラルの円盤/Nevinyrral’s Disk》そして《ネクロポーテンス/Necropotence》のようなカードを採用している。 一方、Virginiaのデッキは直接ダメージを与えるカード・クリーチャー・《剣を鍬に/Swords to Plowshares》・《解呪/Disenchant》などで構成されている。

序盤は均衡しているようだった。 Rutgerは何体かのクリーチャーやアーティファクトの脅威を繰り出し、Virginiaはそれらを破壊した。 両者のマナ・ベースが充実し、呪文が唱えられるたび、それぞれの手札はみるみる少なくなっていった。 そのとき、突然、Rutgerが彼の切り札、《ネクロポーテンス/Necropotence》を唱えた。 1ターンの間、そのネクロなプレイヤーは6枚もの追加のカードを引いた。これは6ターン追加で得たのと同じことだ。 そしてドローによって得た3枚のクリーチャーでVirginiaの枯渇した防御網を速やかに打ち崩したのだった。

Virginiaが《ジェイムデー秘本/Jayemdae Tome》や《土地税/Land Tax》のように同じように強力なカードを使用しないかぎり、Rutgerが得たアドバンテージに彼女が立ち向かう方法は、事実上ない。そしてほぼ確実に敗北するだろう。 何度も繰り返す。カードを引くことは確実でリスクの少ない手段であることが証明されている。 従って多くのプレイヤーが「相手より多くのカードを引くことで、ただ勝利できるだろう」という教訓を抱いている。

Brian Weissman, “Taking Card Advantage”より

MTGの上達に真剣に取り組むプレイヤーのほとんどにとって、最初の一歩になるのが、カード・アドバンテージという概念の理解である。 カード・アドバンテージはあなたが読むだろうMTGについての記事で最も頻出する2単語でできた言葉の1つである。実際、紹介を行うこの記事にあたっても、私はすでに何度も使用した。 あなたがもしカード・アドバンテージの真の概念を理解していないなら、すぐに理解できるようになってほしい。 理想的には、この記事とその後数週にわたるLevel Oneの記事を読んだ後、あらゆるレベルのプレイヤーが、ゲームにおける実際的な意味でカード・アドバンテージをよりよく使うことになるだろう。(または、使い始められるようになるだろう。)

カード・アドバンテージとは何か?

なぜカード・アドバンテージがそれほど重要なのか?

カード・アドバンテージとは、対戦相手よりも効果的に多くのカードを獲得する、あらゆるプロセスのことである。

カード・アドバンテージについての古典的な例の1つは、MTGの最初のセット・アルファまで遡る。《Ancestral Recall》だ。

Ancestral Recall (青)
インスタント
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを3枚引く。

この効果が強力なのは1枚のカードを3枚のカードに交換できるからだ。MTGにおいてこの交換を行う効果の多くは強力だ。 《Ancestral Recall》が極めて象徴的なのは、この非常に強力な効果を、たったの1マナで、しかもインスタント・タイミングで得ることができるからである。

20年前に《Ancestral Recall》がしていたことを、今風に作り直すとこうなる。

Divination / 予言 (2)(青)
ソーサリー
カードを2枚引く。

《予言/Divination》は今日のスタンダードにおけるエスパーコントロールで広く使われるカードだ。最近のプレイヤーにとってもより馴染み深いカードだろう。 《Ancestral Recall》のように、《予言/Divination》もカード・アドバンテージを得るのに役立つ。1枚のカード (《予言/Divination》のことだ) を、デッキの一番上にあるカード2枚と交換するのだ。 2014年バージョンは《Ancestral Recall》と比べて、必要なマナが3倍になり、差し引きで得られるカードの量が半分になっていることに注意が必要だ。

カード・アドバンテージはカードを引くことに限定されない。マジック2014基本セットに収録されている、《予言/Divination》の対になるカードについて考えよう。《精神腐敗/Mind Rot》だ。

Mind Rot / 精神腐敗 (2)(黒)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを2枚捨てる。

《精神腐敗/Mind Rot》はあなたに、あなたの手札1枚と対戦相手の手札2枚を交換する手段を提供する。さて、《精神腐敗/Mind Rot》の偉大なる兄弟である《荒廃稲妻/Blightning》と違い、《精神腐敗/Mind Rot》も《予言/Divination》もダメージを与えるカードではない。なので、最近始めた(願わくば成長途中の)プレイヤーには、なぜこの効果が素晴らしいのかわかりにくいかもしれない。

そこで、想像上のプレイヤーであるCalvinの出番だ。

Calvinは4枚目の土地を置いたばかりだ。そして2枚の手札を持った状態であなたにターンを回してきた。 これはあなたの知らないことだが、Calvinの手札2枚というのは、5枚目の土地と超強力クリーチャー《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》である。 《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》がちょうど5マナであることに気づいただろうか。

あなたは自分の手札を見る。するとそこには《精神腐敗/Mind Rot》がある。 ここで《精神腐敗/Mind Rot》をCalvinに使うと、彼は土地と《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》を両方共捨てなければならない。 Calvinがこの交換で喪う柔軟性は非常に大きなものだ。

少し前まで、Calvinの次のドローが何であれ、彼は次のターン5枚目の土地を置き、超強力クリーチャーを戦場に出すことができていた。そしておそらく攻撃してきて5点ダメージを与えただろう。今のCalvinはどちらもできない。

次のターンCalvinが別の《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》を引いたらどうだろう? 彼はそれを唱えるために必要な5枚目の土地を持っていない。 哀れ、《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》は手札で立ち尽くすことになる。

次のターンCalvinが別の土地を引いたらどうだろう? 少し前までと異なり、Calvinは5枚目の土地があっても何もできない。彼は退屈で何もないターンを行い、パスするだけだ。 ああ退屈!

《Ancestral Recall》や《予言/Divination》で追加のカードを引くことは、同様にプレイヤーの持つ柔軟性を 向上 させる。さっきの状況を少し変えてみよう。Calvinは実際に5枚目の土地を置き、《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》をプレイしてきた。《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》の咆哮があなたに迫る…。

このドラゴンを《殺害/Murder》したい。したくない?

《Ancestral Recall》や《予言/Divination》、そのほかカードを引くことでカード・アドバンテージを稼ぐカードをプレイすることで、あなたはより多くのカードを見ることができる。 つまり《殺害/Murder》・《破滅の刃/Doom Blade》・その他回答になるカードを、より多く、より頻繁に見つけることができるのだ。 次のドロー・ステップで《殺害/Murder》を引くよう祈る代わりに、《予言/Divination》は2枚の《殺害/Murder》を提供してくれるかもしれない! もしくは《殺害/Murder》1枚と別の《予言/Divination》1枚かもしれない。 (この場合さらにデッキを掘り進められる。)

Calvinとあなた、2人とも手札の枚数が2枚だったとしよう。もしあなたが《精神腐敗/Mind Rot》のようなカードを使えば、彼の手札は空になる。 彼にはもう何も残されてないが、あなたには手札が残されていて、彼の次の脅威に回答できる……もしくはあなた自身の脅威を叩きつけ、彼に回答を迫ることができる。

同様にあなたが《予言/Divination》を使えば、もはや2対2ではなく3対2の戦いになる。

カードを兵隊だと想像してみてほしい。すべてのものが2対2であれば公平な戦いだ。しかし、カード・アドバンテージは戦いを不公平なものに変えてしまう。ある部隊が他の部隊より数が多ければどうだろう。少ない方の軍隊がレオニダスI世とスパルタ人である場合を除き、戦闘ではより大きな軍隊こそが、そう、アドバンテージを得ることになるだろう。

カード・アドバンテージとは、対戦相手よりも効果的に多くのカードを獲得する、 あらゆる プロセスのことである。つまり、手札をより多くの手札と交換することだけがカード・アドバンテージではない。 もしあなたの部隊の中に実際にレオニダスI世のような戦士がいたらどうだろう。もしくは、《剛胆な勇士/Intrepid Hero》のようなカードがあったら。

Intrepid Hero / 剛胆な勇士 (2)(白)
クリーチャー - 人間(Human) 兵士(Soldier)
(T): パワーが4以上のクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。
1/1

貧弱で小さな《剛胆な勇士/Intrepid Hero》を見ただろうか?

彼がいるかぎり、《スラーグ牙/Thragtusk》も《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》も無事ではすまない。 あなたは《精神腐敗/Mind Rot》を『1対2交換』(あなたのカード1枚と対戦相手カード2枚を交換する)のカードだと考えることができる。 では、《剛胆な勇士/Intrepid Hero》はどうだろう。 最初に彼が《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》を殺したときは『0対1交換』だ。 もし次の機会があるなら、『0対2交換』になるかもしれない。 《剛胆な勇士/Intrepid Hero》が稼ぐことができるカード・アドバンテージには上限がない。 彼の血に飢えた剣にモンスターを投げ込んでくる、対戦相手の寛容さに上限はあるかもしれないが。

また、もし対戦相手が大きなクリーチャーを決して出さないのであれば、《剛胆な勇士/Intrepid Hero》が化け物退治の名人としての人生を歩み始める機会はなくなるだろう。

もちろんどちらの方法でもカード・アドバンテージはある。

WotCの著名なメンバーであるZac Hill、彼の秘密のガールフレンドについてはどうだろうか。《闇の領域のリリアナ/Liliana of the Dark Realms》だ。

あなたが4マナで《闇の領域のリリアナ/Liliana of the Dark Realms》をプレイして+1能力を起動した場合、彼女はすぐに《沼/Swamp》をプレゼントしてくれる。

リリアナは毎ターン毎ターン追加の《沼/Swamp》を探してきてくれる。起動のたびに、追加のカード・アドバンテージをもたらしてくれるのだ。 《沼/Swamp》の数が増えてもそんなにエキサイティングに感じられないかもしれない。 しかし思い出してほしい。あなたに許されたドローは通常1ターンに1枚だけだ。 《闇の領域のリリアナ/Liliana of the Dark Realms》は、対戦相手がそれを生かしているかぎり、あなたのドローを2倍にしてくれる。

《Ancestral Recall》・《予言/Divination》・《精神腐敗/Mind Rot》・《闇の領域のリリアナ/Liliana of the Dark Realms》は、明らかに、カード・アドバンテージを得られるように作られている。 あなたはカード・アドバンテージが何かをもう知っているはずなので、 これらの種類のカードを見つけ出すのは容易いはずだ。

しかし、カード・アドバンテージを生み出すのが明白なカードを見つけられるだけでは、良いMTGプレイヤーとはいえない。

このカードはどうだろう。このカードはあなたにカード・アドバンテージをもたらすだろうか?

Giant Growth / 巨大化 (緑)
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで+3/+3の修整を受ける。

少し後でこのカードについては触れる。

では次にこのカードはどうだろうか。

Planar Cleansing / 次元の浄化 (3)(白)(白)(白)
ソーサリー
すべての土地でないパーマネントを破壊する。

《巨大化/Giant Growth》や《次元の浄化/Planar Cleansing》は、それがどのようにプレイされるかによって、カード・アドバンテージを生み出したり、あるいは失わせたりするカードである。

1対2交換を行う《予言/Divination》や《精神腐敗/Mind Rot》と異なり、これらのカードによってもたらされるカード・アドバンテージの量は予め決まっているわけではない。これらはむしろ、遥かに少ない特定の状況で、カード・アドバンテージを得たり失ったりするカードである。 “カードをプレイするのではなく勇敢に振る舞え (don’t play the cards—play the man)”という言葉を聞いたことがあるだろうか? 《巨大化/Giant Growth》や《次元の浄化/Planar Cleansing》をカード・アドバンテージ獲得の手段として活用できるかどうかは、不確定な状況における対戦相手の特定の行動に大きく依存する。

《巨大化/Giant Growth》からカード・アドバンテージを得る場合

Andrewは《捕食スリヴァー/Predatory Sliver》1体で攻撃した。 (カードには1/1と書いてあるが自身の能力で2/2だ。)

Randyは《マーフォークのスパイ/Merfolk Spy》(1/1)と《海岸ドレイク/Seacoast Drake》(1/3)でブロックした。

《マーフォークのスパイ/Merfolk Spy》と《海岸ドレイク/Seacoast Drake》を一緒にするとパワーが2・タフネスが4になる。Randyの狙いは、1/1の《マーフォークのスパイ/Merfolk Spy》を、もっとコストが重くサイズが大きい《捕食スリヴァー/Predatory Sliver》と1対1で交換することにある。《海岸ドレイク/Seacoast Drake》はタフネスが3あるので、パワーがたった2である《捕食スリヴァー/Predatory Sliver》にやられることはないだろう。

ちょっと待った!

ブロックが成立してからダメージが与えられる前に、Andrewは2/2の《捕食スリヴァー/Predatory Sliver》に《巨大化/Giant Growth》を唱えた。

《捕食スリヴァー/Predatory Sliver》はいまや5/5であり、《マーフォークのスパイ/Merfolk Spy》に1点、《海岸ドレイク/Seacoast Drake》に4点のダメージを割り振ることができる。

Andrewは《巨大化/Giant Growth》1枚で、Randyのクリーチャー2体を効率良く倒すことができた。カード・アドバンテージだ!

《巨大化/Giant Growth》でカード・アドバンテージを失う場合

ゲームの序盤はMarkが支配していた。 最初の数ターンは彼の攻撃的な緑デッキが本領を発揮し、強烈な攻撃をしていた。 しかしTrickの戦線が持ち直してきた。カード間の暴力による混戦状態により、多くの交換が発生した。

Markが最初に揃えた軍勢のうち、生き延びたのは《捕食スリヴァー/Predatory Sliver》だけであった。Trickにはクリーチャーが残っておらず、ライフも5点しかない。Markは攻撃を仕掛けた。Trickにはブロッカーがいない。当然ブロックはない。

ここしかない! Markは思った。

彼は宣言した。「《巨大化/Giant Growth》!」

「《巨大化/Giant Growth》がスタックにある間に」Trickが口を挟んだ。「対応して《捕食スリヴァー/Predatory Sliver》に《ショック/Shock》。」

しまった!

Trickは1枚のカード(《ショック/Shock》)で、攻撃している《捕食スリヴァー/Predatory Sliver》と凶悪な《巨大化/Giant Growth》の両方に対処できた。 強化呪文を使うことは、Trickに機会を与えることになってしまった。《巨大化/Giant Growth》が《ショック/Shock》による1対2交換を可能にしたのだ。

この記事で説明しているカードの交換、そしてカード・アドバンテージの交換については、何人かのプレイヤーはカードボード(厚紙)・アドバンテージと呼んでいる。 ゲーム内でも文脈上の現実でも関係なく、彼らは1枚の厚紙(例えば《Ancestral Recall》・《予言/Divination》)を次の2~3枚の厚紙に交換できる。または《精神腐敗/Mind Rot》1枚を《山/Mountain》1枚+《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》1枚と交換できる。あるいは、《ショック/Shock》1枚を《捕食スリヴァー/Predatory Sliver》1体+《巨大化/Giant Growth》1枚と交換できる。

カード・アドバンテージを得ようと行動することは、良い結果につながることが多い。 カード・アドバンテージがMTGにおいて重要な戦略の原則である理由はこれである。 しかし、これはMTGにおける戦略のすべてでもないし、究極的なものでもない。 思い出してほしい。我々の究極的な目的は相手より先にゲームに成功することであり、ただ多くの厚紙にアクセスすることではないのだ。

また、カード・アドバンテージや、それに近いプロセスに繋がる、別の類似した現象も存在する。 事実上の カード・アドバンテージについては、Level Oneの将来の記事で取り上げることにする。 カード・アドバンテージに繋がる一般的な機会についても後々取り上げる。 そのような機会とは、1対2のような交換、ライフポイントの使い方、(そして時には)対称性である。

《次元の浄化/Planar Cleansing》は対称性のあるカードだが、ときにカード・アドバンテージを生むのだ。

しかし次回の記事では、Level Oneの最初の3回のレッスンを、MTGの歴史における最初の偉大なデッキの研究としてまとめることにする。 そのデッキとは、THE Deckだ!

愛をこめて。

Mike

(注): 「カード・アドバンテージとは、対戦相手よりも効果的に多くのカードを獲得する、あらゆるプロセスのことである。」という定義は、MTG理論の黎明期に、GP優勝者のEric Taylorが提唱したものである。