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[翻訳記事] 複数の戦略

原文

この文章は海外公式サイト (DailyMTG)に掲載されていたStrategiesの和訳である(リンク先は Internet Archive)。原文の掲載は2014年2月3日だった。

初心者向け記事であるLevel One、Mike Flores氏版の第2回。


今週分の話を始める前に、最近Duels of the Plainswalkers 2013でプレイしていた時の手札について話そうと思う。

私はGoblin Ganglandデッキで遊んでいて、Into the Mineエンカウンターに挑んでいた。Into the Mineエンカウンターでは、相手はただ《吠えたける鉱山/Howling Mine》や《濃霧の層/Fog Bank》のようなカードをプレイする。前者は赤デッキの息切れを補ってくれるし、後者はまったく殺意のないカードだ。Into the Mine側は100枚以上のデッキを使っていて、あなたのライブラリーを《吠えたける鉱山/Howling Mine》で削りきることを狙ってくるのだ。これは例としてあげるには素晴らしい。なぜならGoblin Ganglandのようなデッキを登場させることができ、それを自由に動かせ、そのプロアクティブなアプローチに注目できるからである。

Krenko, Mob Boss’s Goblin Gangland - Duels of the Planeswalkers 2013

土地 (24)

  • 24x 《山/Mountain》

クリーチャー (27)

  • 1x 《戦装飾のシャーマン/Battle-Rattle Shaman》
  • 1x 《火膨れ杖のシャーマン/Blisterstick Shaman》
  • 1x 《Clickslither》
  • 2x 《燃えさし運び/Ember Hauler》
  • 2x 《宝石の手の焼却者/Gempalm Incinerator》
  • 2x 《ゴブリンの付け火屋/Goblin Arsonist》
  • 1x 《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker》
  • 1x 《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》
  • 1x 《ゴブリンの火の悪鬼/Goblin Fire Fiend》
  • 3x 《ゴブリンの長槍使い/Goblin Piker》
  • 1x 《ゴブリンの群衆追い/Goblin Piledriver》
  • 1x 《ゴブリンの荒くれ乗り/Goblin Roughrider》
  • 1x 《ゴブリンの戦長/Goblin Warchief》
  • 1x 《ゴブリンの戦煽り/Goblin Wardriver》
  • 1x 《低地の鈍愚/Lowland Oaf》
  • 2x 《怒り狂うゴブリン/Raging Goblin》
  • 2x 《Reckless One》
  • 2x 《かき回すゴブリン/Rummaging Goblin》
  • 1x 《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》

呪文 (9)

  • 1x 《ゴブリンの手投げ弾/Goblin Grenade》
  • 2x 《クレンコの命令/Krenko's Command》
  • 1x 《精神の骨折り/Mindmoil》
  • 1x 《怒りの反射/Rage Reflection》
  • 2x 《ヴァルカスの指輪/Ring of Valkas》
  • 2x 《ショック/Shock》

さてここで、次のような初手が来たときにどう動くか考えてほしい。

  • 《山/Mountain》
  • 《山/Mountain》
  • 《山/Mountain》
  • 《ゴブリンの長槍使い/Goblin Piker》
  • 《クレンコの命令/Krenko’s Command》
  • 《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》
  • 《ゴブリンの戦長/Goblin Warcheif》

2ターン目には何をプレイするだろうか。《ゴブリンの長槍使い/Goblin Piker》? 《クレンコの命令/Krenko’s Command》?

Goblin Piker / ゴブリンの長槍使い (1)(赤)
クリーチャー - ゴブリン(Goblin) 戦士(Warrior)
2/1

Krenko’s Command / クレンコの命令 (1)(赤)
ソーサリー
赤の1/1のゴブリン(Goblin)・クリーチャー・トークンを1体生成する。

3ターン目はどうだろう。《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》? 《ゴブリンの戦長/Goblin Warcheif》?

Goblin Chieftain / ゴブリンの酋長 (1)(赤)(赤)
クリーチャー - ゴブリン(Goblin)
速攻(このクリーチャーは、あなたのコントロール下になってすぐに攻撃したり(T)したりできる。)
あなたがコントロールする他のゴブリン(Goblin)・クリーチャーは+1/+1の修整を受けるとともに速攻を持つ。
2/2

Goblin Warchief / ゴブリンの戦長 (1)(赤)(赤)
クリーチャー - ゴブリン(Goblin) 戦士(Warrior)
あなたが唱えるゴブリン(Goblin)呪文は、それを唱えるためのコストが(1)少なくなる。
あなたがコントロールするゴブリン・クリーチャーは速攻を持つ。
2/2

これらは興味深い質問だ。なぜなら、《ゴブリンの長槍使い/Goblin Piker》と《クレンコの命令/Krenko’s Command》はそれなりに似たカードだからである。どちらも3ターン目に合計パワー2で攻撃できる。どちらもあなたの戦場にはタフネス1のクリーチャーが残ることになる。しかし、ここには重要な違いがある。

《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》と《ゴブリンの戦長/Goblin Warcheif》も似ている。どちらも速攻を持った2/2のゴブリンであり、他のゴブリンに速攻を与える。《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》は他のゴブリンを一回り大きくすることができる。《ゴブリンの戦長/Goblin Warcheif》は他のゴブリンのコストを下げる。全員速攻持ちになったゴブリンを、更に早く展開できるようになるのだ。

前回、「戦略」という記事で、我々は手順・予想可能な結果・反復性について議論した。この初手のような事例は非常に有用である。理由は1つ。我々がカードをプレイする手順が、いくつかの重要な影響をもたらすことを学べるからである。

2ターン目において、《クレンコの命令/Krenko’s Command》と《ゴブリンの長槍使い/Goblin Piker》を比較しよう。先程も言ったように、2枚の2マナのカードは一見似た結果をもたらす。戦場の合計パワーは2で、タフネスの閾値は1だ。パッと見ただけではどちらをプレイしても大きな違いはない。

しかし、手札の他の部分に基づけば話は違う。2つのプレイのうち片方が、もう片方よりも実質的で予想可能な良い結果をもたらすと私は主張しよう。

そのプレイとは、《クレンコの命令/Krenko’s Command》だ。

私が《クレンコの命令/Krenko’s Command》が2ターン目における優れたプレイだと感じた理由は2つある。

まず1つ目の理由。もし、このあと《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》をプレイするなら、我々は3ターン目に合計パワー6で攻撃できることになる。《クレンコの命令/Krenko’s Command》でなく《ゴブリンの長槍使い/Goblin Piker》だった場合の合計パワーは5だ。計画通りのカードとマナ(2枚のカードと5マナはもとより使用するつもりだった)とを使用することで、1点分のダメージを多く与えることができる。他の要素はすべてイコールだ。文脈の上でも同様だ。相手が《濃霧の層/Fog Bank》を使ってきた場合、《クレンコの命令/Krenko’s Command》のほうが攻撃が1体多く通るぶん《ゴブリンの長槍使い/Goblin Piker》より優れている(《ゴブリンの長槍使い/Goblin Piker》では完全に抑え込まれてしまうだろう)。しかしこれは私がここで議論したい点ではない。

2つ目の理由。それはマナをできるだけ使い切るように近い将来《ゴブリンの戦長/Goblin Warcheif》をプレイするだろうということだ。3ターン目に《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》をプレイする場合でも、2ターン目に《クレンコの命令/Krenko’s Command》をプレイしておくことは将来のマナを温存しておくことに繋がる。これはすでに持っている手札の情報から「予想可能」だ。ある将来のターンで《ゴブリンの戦長/Goblin Warcheif》が戦場に出ているなら、《ゴブリンの長槍使い/Goblin Piker》は(赤)でプレイできる。《クレンコの命令/Krenko’s Command》はゴブリンを作るカードだがゴブリンではないので、(1)(赤)が必要なままだ。

さて、では3ターン目はどうだろう。

《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》? 《ゴブリンの戦長/Goblin Warcheif》?

先程の議論では、《クレンコの命令/Krenko’s Command》と《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》を組み合わせるとよりダメージを与えられることを説明した。しかし、実際に私が行ったプレイは違う。

ちょっと先のことまで話してしまおう。Into the Mineが《吠えたける鉱山/Howling Mine》を置いていたにも関わらず、私は4ターン目に土地を引けなかった。しかし、私は4ターン目に土地3枚のままで勝利できた。もしプレイしたのが《ゴブリンの戦長/Goblin Warcheif》ではなく《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》であれば結果はわからなかった。とくに、防御的な《濃霧の層/Fog Bank》が出てきたからだ。

話を戻して、土地が3枚で止まってしまうことを想定し、これら7枚のカードだけで将来の可能性を予想してみよう。

  • 《クレンコの命令/Krenko’s Command》 → 《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》の順でプレイする場合
    1. 1ターン目・《山/Mountain》
    2. 2ターン目・《山/Mountain》・《クレンコの命令/Krenko’s Command》
    3. 3ターン目・《山/Mountain》・《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》・攻撃して6点ダメージ
    4. 4ターン目・《ゴブリンの戦長/Goblin Warcheif》・攻撃して9点ダメージ

4枚目の土地がなくとも、4ターン目には無防備な相手に15点のダメージが入ることになる。

  • 《クレンコの命令/Krenko’s Command》 → 《ゴブリンの戦長/Goblin Warcheif》の順でプレイする場合
    1. 1ターン目・《山/Mountain》
    2. 2ターン目・《山/Mountain》・《クレンコの命令/Krenko’s Command》
    3. 3ターン目・《山/Mountain》・《ゴブリンの戦長/Goblin Warcheif》・攻撃して4点ダメージ
    4. 4ターン目・《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》・《ゴブリンの長槍使い/Goblin Piker》・攻撃して12点ダメージ

この想定なら、もう1枚多くのカードを使用できていて、4ターン目までに与えるダメージが1点増えている。

4枚目の土地を引けなかったとき、代わりに何を引いていたか明らかにしよう。私が引いたのは《ゴブリンの手投げ弾/Goblin Grenade》と《ゴブリンの群衆追い/Goblin Piledriver》だ。《ゴブリンの群衆追い/Goblin Piledriver》はプロテクション(青)があるので、Into the Mineの《濃霧の層/Fog Bank》をすり抜けることができ、重要な脅威になりえる。そして、私は3ターン目に《ゴブリンの戦長/Goblin Warcheif》を出していたので、《ゴブリンの群衆追い/Goblin Piledriver》を(赤)だけで出すことができた。《濃霧の層/Fog Bank》の抵抗を突き破り、20点以上のダメージを与えることができたのだ。

だが、ここでこれらのような明確な脅威になるカードを引くだろうことは、知っておく必要のないことた!

早い段階で《クレンコの命令/Krenko’s Command》をプレイしておくことは、後にマナの温存に繋がることが容易に予測できる。

そのマナは、4ターン目に提供され、追加で投入することでさらなるカードをプレイすることを可能にする。

これは、たしかに・確実に・間違いなく、対戦相手のプレイによって我々の取るべきプレイが変わる状況だ。 もし対戦相手がプレイするのが《濃霧の層/Fog Bank》でなく1/3のクリーチャーであるなら、3ターン目に《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》を出すことでゴブリンのタフネスが追加され、より安全に攻撃できるようになるだろう。 しかし、はじめに与えられた情報と最初の数ターンで我々の手駒がどう動くかから、初手7枚から反復可能なより良い手順を得ることができたと言えよう。

つまりこういうことだ。

Level Oneへようこそ!

最初の記事において、我々は戦略について話した。今週話す内容は、同じ戦略について……ただし複数の戦略についてだ。 競合する戦略・異なった戦略についても話題にする。先ほど説明したDuels of the Plainswalkers 2013におけるゲームで、我々は2ターン目と3ターン目にそれぞれ何をプレイするかという選択に直面した。 3マナ2/2で速攻を持ち、他のゴブリンに速攻を与える2種類のカードは似たようなものに見える。 しかし、相手の行動や自分のデッキの一番上のカードが何かによって、プレイの結果は大きく変わることになり得る。

ここで1つ、重大な発表がある。MTGにおいて、特に競技的なMTGにおいて、実行可能なゴールは1つしかない。

たった1つだ。

それは 相手がゲームに成功する前に自分が成功すること である。

この1つの原則が、《ゴブリンの戦長/Goblin Warcheif》が《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》よりも(基本的に)優れている理由だ。 MTGのゲームはある種の構造を持っていて、多くのゲームは似たようなものに見える。 しかし、私自身、 まったく同じ ゲームを2回プレイしたことがあるかどうかわからない。 1点のライフポイントの差が、対戦相手に1ターン、あるいはそれ以上の防御の余裕を与えるだろう。 たった1ターンでも相手を自由にさせれば、高速でパワフルなデッキはしばしばあなたを完全に殺してしまうだろう。

そんなことをしてはいけない。

(少なくとも、できるだけするべきではない。)

相手がゲームを成功裏に終了させる前に自分がそうすることが目的であれば、非常に緊迫した試合において、その1点を認識し、尊重する必要がある。

「成功する」が何を意味するかは事例によって様々だ。 だが通常は「20点のダメージを与えること」・「相手のライブラリーを削りきること」・「10個の毒カウンターを与えること」なんてものになるだろう。

ある意味で、MTGのそれぞれのゲームは競争である。

私たちは必ずしも、これらの事例で物事を考える必要はない。前回の《激動/Upheaval》と《サイカトグ/Psychatog》の例はどうだっただろうか。私たちは重大なのは10ターン目付近だと言わなかっただろうか。 その場合でも、9ターン連続して土地をおいたと仮定できるだろうか。

あなたは、このデッキに《排撃/Repulse》や《チェイナーの布告/Chainer’s Edict》のような 攻撃的でない カードが入っていたことを憶えているかもしれない。 当時の環境には緑青マッドネス・デッキがいた。2ターン目までの間に《日を浴びるルートワラ/Basking Rootwalla》→《野生の雑種犬/Wild Mongrel》と展開し、3ターン目に《尊大なワーム/Arrogant Wurm》を捨てて《野生の雑種犬/Wild Mongrel》を+1/+1修正しながら合計パワー4で攻撃してくるデッキだ。2ターン目にも《日を浴びるルートワラ/Basking Rootwalla》で攻撃しているので3ターン目までの合計ダメージは5点。そして相手の戦場には合計パワー7、3体のクリーチャーが並んでいる。このうち4点はトランプル持ちの《尊大なワーム/Arrogant Wurm》で、他2体のクリーチャーは自身の能力でサイズアップすることができる。 先程述べたような 攻撃的でない 呪文はこれらのカードに対処できる。

マスターズで、Neil ReevesがKen Hoに述べたことを思い出してほしい。

あなたが私を攻撃する。私はあなたのクリーチャーを殺そうとする。 あなたのクリーチャーがどれか残れば、あなたの勝ちだ。

Neil ReevesからKen Hoへ

MTGの戦略は、対戦相手をなるべく早く殺そうとする戦略と、よりゆっくり殺そうとする戦略の押し引きのように見える。しかしその途中で、対戦相手のカードとの相互作用が発生する。 2つの競合する戦略スタイルにはそれぞれ、動機(Insentive)と阻害要因(Disinsentive)があるのだ。

Goblin Ganglandデッキでさえ、一旦展開を止め、《宝石の手の焼却者/Gempalm Incinerator》をサイクリングすることがある。もし《宝石の手の焼却者/Gempalm Incinerator》で相手の重要なブロッカーを除去できれば、その2マナを攻撃的なクリーチャーに回すよりも速く勝利できるだろう。 《クレンコの命令/Krenko’s Command》の次のターン、《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》の代わりに《ゴブリンの戦長/Goblin Warcheif》をプレイするとそのターンのダメージは2点減るが、その次のターンに総ダメージで逆転するというのと似ている。

プロアクティブな戦略において「間違える」ことは難しい。プロツアー優勝者であるDavid E. Priceがあるとき言っていた。「間違った脅威はない。間違った回答があるだけだ。」

回答であるカードについては間違いがある。《尊大なワーム/Arrogant Wurm》に対して《燻し/Smother》は効かないし、攻撃してきた《野生の雑種犬/Wild Mongrel》に対して《恐ろしい死/Ghastly Demise》を使うのは悲惨だろう。だから、リアクティブであり回答を満載したデッキは、プロアクティブである対戦相手よりも多くのリソースを蓄積できるようになっている傾向がある。 多くのプレイヤーはリソースの蓄積を力と関連付ける傾向がある。そして、遅いデッキは速いデッキよりもフレキシブルである傾向がある。

Next Level Deckbuildingの中で、Patrick Chapinはデッキを大きく4つに分類した。ビートダウン・ミッドレンジ・コントロール・コンボである。 このコラムでも数ヶ月後にはこれら4つのアーキタイプに関連した記事を書くつもりだ。 しかし、私はもっと簡単に、ビートダウンとコントロールという分け方をしようと思う。ここでのビートダウンは本当にビートダウンするデッキだけのことではなく、単にアクティブなデッキを指す。 ここではどちらが「正しい」かということは気にせず、あなたの役に立つものが何かを見つけ出してほしい。それが、あなた自身のゲームを改善するのに最も役立つものだ。

さてここからは、ここ数ヶ月で最もポピュラーなスタンダードのデッキ3種類を考えてみよう。青単信心・黒単信心・エスパーコントロールだ。 相手より先にゲームに「成功」するという概念が、明確な形で理解できるようになると思う。

説明しよう。

青単信心・黒単信心・エスパーコントロール

青単信心はこの3種類のうち最も「ビートダウン」なデッキである。 それは盤面にカードを出そうとし、攻撃性を発揮し、そして殴り、また殴る。 (《タッサの二叉槍/Bident of Thassa》や《夜帷の死霊/Nightveil Specter》でリソースとアドバンテージを得ようとするときもある。) 青単信心は5ターン目を最重要ターン・致命的なターンにするような道筋をいくつも持っている。

エスパーコントロールは通常、3種類の中で最も「コントロール」なデッキである。 勝利は極めてゆっくりとしたものだ。 「速い」勝利の方法は《霊異種/AEtherling》によるものだろうが、それだって7ターン目直前にようやく出るくらいだ。 エスパーコントロールは、速く勝利することよりも、相手の勝利を遅くすることを望んでいる。《至高の評決/Supreme Verdict》に続く《今わの際/Last Breath》、《解消/Dissolve》によって時間を稼ぐ。そして《スフィンクスの啓示/Sphinx’s Revelation》により巨大なリソースを築き、相手の攻撃を無力化するのだ。 エスパーコントロールは28ターン目の相手の手札枚数を訊きたいだろう。そして少ない枚数を教えられて、空の戦場を見てほくそ笑む。 エスパーコントロールは、勝利するのが30数ターン目であっても、「決して勝てない」より速いことを知っているのだ。

黒単信心はエスパーコントロールより速く、青単信心よりコントロール寄りである。 多数の除去カードはあるが完全にコントロールなわけではない。《軍勢の集結/Assemble the Legion》や(過ちである)《群れネズミ/Pack Rat》から出てくる多数のクリーチャーには対処できないのだ。《次元の浄化/Planar Cleansing》が足りない。 投入されている脅威は強力なものだが、青単信心が哀れな対戦相手をなぶり殺すまでの時間では、一撃当てるのがせいぜいだろう。 しかし黒単信心は我々に素晴らしい戦略的洞察を与えてくれる。黒単信心はその立ち位置を変化させることができるのだ。 黒単信心は状況が必要とするよりも多くのコントロール要素を得ることができる。 (打ち消し呪文の代わりに《強迫/Duress》を持ち、《スフィンクスの啓示/Sphinx’s Revelation》に相当する《地下世界の人脈/Underworld Connections》・《死者の神、エレボス/Erebos, God of the Dead》・《エレボスの鞭/Whip of Erebos》がある。) また、より大きなイニシアチブを得て、競争をより速くすすめることもできる。 黒単信心は青単信心に対して大抵《生命散らしのゾンビ/Lifebane Zombie》を持ってくる。なぜならパワー3でブロックされず、時折《審判官の使い魔/Judge’s Familiar》を追放するクリーチャーは、ゲームを早く終わらせることができるからだ。 青単信心に対する優位性が永続することはほとんど無いことを憶えておこう。《海の神、タッサ/Thassa, God of the Sea》や《タッサの二叉槍/Bident of Thassa》は、「誰が勝っているか」を容易に逆転できる。 黒単信心のベストな戦略は、対戦相手が復帰するまでに勝ってしまうことだろう。

競技的なMTGにおいて、あらゆる成功する戦略は対戦相手がいつどのように勝つのか知る必要がある。自分が、先に勝つために。

愛をこめて。

Mike