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[翻訳記事] 戦略

原文

この文章は海外公式サイト (DailyMTG)に掲載されていたStrategyの和訳である(リンク先は Internet Archive)。原文の掲載は2014年1月27日だった。

初心者向け記事であるLevel One、Mike Flores氏版の第1回。


Isaacは船をとりまく無知な人々により、未だに賞賛されていた。 しかし、主流である科学が二線級にとどまり、分析がただの「説明」にすぎないことが(それも難解なゴミの陰に隠れた悪い説明だ)彼には実感できていた。

China Mieville「Perdido Street Station」より

このコラムはあなたのためのものだ。 Level Oneは新しい週刊コラムである。 このコラムではMTGの最も古く - そして願わくば最も有用な - 戦略を紹介する。 この本当に素晴らしいゲームは、ここ数年で爆発的な成長を遂げている。 DailyMTG.comに訪れるようなプレイヤーやファンは1200万人もいる。 しかし、出版コミュニティとしては、皆同じ言葉を話し、皆同じ語彙を使ってゲームしていると仮定することはできない。 単にそれは事実でない。そして我々の殆どがそれを事実だと思っていやしないかと、私は疑っている。

ゲームを最近始めた人は100万人単位に上る。Duels of the Plainswalkersのおかげだ。 彼らはゲームを通じ成長するための共通の機会を持っていない。 また、Magic Onlineや対面でのゲームプレイを長くしてきたプレイヤーに比べると、同じレベルで戦略を理解できているわけでもない。 Level Oneは、増加するプレイヤーたちにDaily MTGが贈る、MTGの壮大な考え方を捉えなおそうという取り組みなのである。

もしかすると、あなたは長年ゲームをプレイしてきた人かもしれない。 我々の記事やブログ・毎週のレポートに登場する、”カード経済”や”テンポ”といった単語や、アーキタイプの名前にも詳しいかもしれない。 そんなあなたにとっても、Level Oneが良いリフレッシュになり、なにか新しい学びになることを望んでいる。

皆さんに楽しんでいただけますように。

今回のLevel Oneで取り上げるのは、最初のレベルの最初、戦略についてだ。

さて、(MTGの文脈において)戦略とはなんだろう。

我々の目的のために、ここではこのことを戦略と呼ぶことにする。「反復可能な一連の手順で、予測可能な結果につながるもの」だ。

ここで出てきたすべてのことが重要だ。 反復可能であること。 特定の、予想可能な結果をもたらすこと。 そして最後に紹介するが、同じように重要なのが、手順という考え方。

それでは細かく見ていこう。

カムバック

知らなかったかもしれないが、週末のカバレッジに登場したビッグ・ネームのほとんどはカムバックしたプレイヤーだった。 Dave WilliamsのようなGP優勝者、Eric Froehlichのようなプロツアートップ8、そしてBrian Kibler・Kai Budde・Patrick Chapin・Jon Finkelのような殿堂入りプレイヤーでさえ、プロの世界で支配的になる前に何年もMTGから離れている。

私の大好きなライターのひとりであるDan Paskinsが、同じように競技マジックに復帰しようとした同郷人について書いている。

先ほど名前を挙げた数々のプレイヤーと同様に、Danの友人もまたプロツアーやGPトップ8の常連であった。 実際、彼は戦略においては巨匠と呼べる人物で、革新的なデッキを多く作ってきた。 彼の名声を高めたのは、失われて久しいエクステンデッドにおける複雑な《ネクロポーテンス/Necropotence》デッキだ。 実績のある、スマートな人物である。

Danの友人(記事の目的のために「名無し」のままにしておく)は、最近PTで勝利しているアーキタイプを使ってカムバックを試みた。 ここに挙げるデッキリストを改良したものである。

Astral Slide by Osyp Lebedowicz - ブロック構築 - PT Venice 優勝

土地 (27)

  • 4x 《忘れられた洞窟/Forgotten Cave》
  • 9x 《山/Mountain》
  • 10x 《平地/Plains》
  • 4x 《隔離されたステップ/Secluded Steppe》

クリーチャー (10)

  • 2x 《Daru Sanctifier》
  • 4x 《Exalted Angel》
  • 2x 《宝石の手の焼却者/Gempalm Incinerator》
  • 2x 《獅子面のタイタン、ジャレス/Jareth, Leonine Titan》

呪文 (23)

  • 4x 《Akroma's Blessing》
  • 4x 《アクローマの復讐/Akroma's Vengeance》
  • 4x 《Astral Slide》
  • 4x 《Lightning Rift》
  • 3x 《新たな信仰/Renewed Faith》
  • 4x 《星の嵐/Starstorm》

サイドボード (15)

  • 2x 《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》
  • 4x 《アヴァラックス/Avarax》
  • 3x 《啓蒙/Demystify》
  • 3x 《Disciple of Grace》
  • 2x 《宝石の手の焼却者/Gempalm Incinerator》
  • 1x 《奉納/Oblation》

Danの知人はあっさり負けた。 0-2になった彼は敗因をマナスクリューだと説明した。マナスクリューとは、デッキの動作に必要な土地の枚数を引き込めないことだ。 Danはわかったといい、歴戦の勇士同士でラウンドの合間にゲームを楽しむことにした。

名無しのプレイヤーはお決まりの手順を行った。《霊体の地滑り/Astral Slide》を出し、《賛美されし天使/Exalted Angel》を裏向きで出す。

Danは攻撃を通すために《炎の稲妻/Firebolt》を天使に撃ち、名無しのプレイヤーはサイクリングして《霊体の地滑り/Astral Slide》を使い天使を逃した。そしてターン終了時、Danの知人は《賛美されし天使/Exalted Angel》を戦場に戻した。……裏向きのままで!

「マナスクリューだって?」Danは笑った。

Danの友人が持っていたのは、毎週多くのプレイヤーが手にしているものだ。それはパワフルなデッキリストである。

しかし、彼が持っていなかったのは、その戦略だ。

《霊体の地滑り/Astral Slide》のような複雑なカードについて書いてしまうと混乱を招くのではないかと思う。 Level Oneの最初の記事としては特にそうだ。 しかし、ここが一種のポイントなのである。

Danの友人はプロツアートップ8クラスのプレイヤーであるが、デッキについての完全な知識がないために挫折したのだ。

このデッキには《賛美されし天使/Exalted Angel》のようなマナ・コストの重い(変異持ちの)カードが入っているが、そこに1つの大きなポイントがある。 一度それを変異でプレイした後《霊体の地滑り/Astral Slide》で戦場から追放すると、表向き・フルパワーで戦場に戻ってくるのである。 ここでの一連の手順のポイントは、最終的に4/5絆魂持ちクリーチャーを手に入れることにあったのだ。

Danの友人が天使を戦場に2/2のままで戻したとき、Danは友人がマナスクリューで負けたと信じることは難しいと感じた。

我々にとって、「戦略」はデッキリストより難しい。マッチやトーナメントのレポートより難しい。抽象的な理論よりも難しい。 デッキリストに関する最良の記事は、成功した戦略を読者が把握することを助けるだろう。 最良のレポートや、理論の断片でもそうだ。 しかし、それらのどれについても、戦略は必要な要素ではない。 最新のデッキリスト75枚を確認するのは賢明なことである。しかし、そのデッキリストだけでは、(もしそこに目新しいテクニックがあったとしても、) いつでもストーリーすべてがわかるわけではないのだ。 最近のPT優勝者でも同じである。 だから、Danの友人の話が私の一番好きな例なのだ。

さて、戦略の話をするには、特定の予測可能な結果を導く、反復可能な手順の話をすることになる。 それが古いデッキであれ新しいデッキであれ、だ。

Carlos Romão - 世界選手権2002

土地 (24)

  • 2x 《Cephalid Coliseum》
  • 1x 《ダークウォーターの地下墓地/Darkwater Catacombs》
  • 10x 《島/Island》
  • 4x 《Salt Marsh》
  • 3x 《沼/Swamp》
  • 4x 《地底の大河/Underground River》

クリーチャー (8)

  • 4x 《夜景学院の使い魔/Nightscape Familiar》
  • 4x 《Psychatog》

呪文 (28)

  • 3x 《Chainer's Edict》
  • 3x 《Circular Logic》
  • 4x 《対抗呪文/Counterspell》
  • 3x 《Cunning Wish》
  • 3x 《綿密な分析/Deep Analysis》
  • 3x 《嘘か真か/Fact or Fiction》
  • 3x 《記憶の欠落/Memory Lapse》
  • 4x 《排撃/Repulse》
  • 2x 《Upheaval》

サイドボード (15)

  • 1x 《Coffin Purge》
  • 4x 《強迫/Duress》
  • 1x 《嘘か真か/Fact or Fiction》
  • 1x 《反論/Gainsay》
  • 3x 《Ghastly Demise》
  • 1x 《Hibernation》
  • 1x 《Mana Short》
  • 1x 《Recoil》
  • 1x 《殺戮/Slay》
  • 1x 《Teferi's Response》

最近の視点で見るとこのデッキには奇妙なカードが入ってるように見えるかもしれない。

もし特定の手順を知らなければ、《激動/Upheaval》と《サイカトグ/Psychatog》は、プレイするのが厄介なカードになるだろう。 しかし、どうやってこれらのカードを共に使うのか学びさえすれば、それらは強力な組み合わせになる。

《激動/Upheaval》は書いてあることだけ読めば、対称的にはたらくカードだ。それはどちらのプレイヤーも捻り上げてしまう。 あなたがもしこの呪文を間違ったタイミングで使うと、例えば6ターン目にすぐに使ったりすると、あなたは戦場を空にした状態でターンを終え、あなたの対戦相手から1ターン目をやり直すことになる。

しかし、Romãoが世界選手権に持ち込んだデッキにおいては、これら2枚のカード、そしてそれを使うための手順の知識が、対戦相手を窮地に追い込むのである。

手順はこうだ。

  1. 10ターン目まで持ちこたえる
  2. 戦場に9枚の土地がある状態で《激動/Upheaval》を使う。このときマナ・プールに(青)(青)(黒)を残しておく。
  3. 《島/Island》を出す。
  4. マナ・プールの(青)(青)(黒)を使って《サイカトグ/Psychatog》をプレイする。ここであなたの戦場には《サイカトグ/Psychatog》があり、《島/Island》から(青)が出せる状態である。(青)があれば《堂々巡り/Circular Logic》をマッドネスで唱えられるので、対戦相手のアクション1つには対応できる。あなたは土地1枚と《サイカトグ/Psychatog》だけを戦場に残し、手札をディスカードしてターンを返す。しかしあなたの手札はまだ7枚あるだろう。

手札と墓地にたっぷりカードがあるので、《サイカトグ/Psychatog》は1回の攻撃で相手のライフを削りきれるだろう。

ここで手順がいかに重要かをもう一度確認しよう。

《サイカトグ/Psychatog》は単体では3マナ1/2のクリーチャーにすぎない。手札や墓地にカードがなければ目立たない存在だ。

《激動/Upheaval》についてはさっきも述べたが、悲惨なカードになりうる。対戦相手のほうに恩恵を与えてしまったりする。

しかしあなたがそれをプレイするための手順を知っていれば、つまり同じターンにプレイするものだと知っていれば、こいつらは一撃必殺のコンボのように見えるのだ。

反復

MTGにおいては、戦略は反復可能なときにのみ有効なものだ。

あなたが私を攻撃する。私はあなたのクリーチャーを殺そうとする。 あなたのクリーチャーがどれか残れば、あなたの勝ちだ。

Neil ReevesからKen Hoへ

これはマスターズ・シリーズのマッチ上で、USナショナルチームのメンバーであるNeil ReevesとPT大阪の勝者Ken Hoとの間でかわされた会話である。 Neilの発言が究極的真実かどうか、私は時間をかけて考えてみた。

このようなコメントは、MTGへのあなたのアプローチを変えてしまうだろう。 あるいは、少なくとも特定のマッチアップについて、永遠に変えてしまうだろう。

ここで言ってるのはつまりこういうことだ。 対戦相手が火力呪文を使わないビートダウンデッキであるかぎり、あなたは対戦相手のクリーチャーを殺すことに専念できる。 ライフポイントの最後の1点を維持しさえすれば、あなたのリソースや精神的エネルギーはすべてクリーチャーを殺すことにつぎ込むことができるのだ。 ほとんどの緑のデッキ・白ウイニー・トークン戦略 (この場合はもちろん緑青も含む)は、この共通した、反復可能な哲学を以て対処できる。

予測可能な結果

敵に遭遇すれば、計画は必ず変更される。

大モルトケ

どのような手順であっても、その結果を得るにはテーブルの向こうの対戦相手にそれを通してもらわねばならない。ドイツの偉大なる戦術家である大モルトケは衝突の初期段階のみが計画可能であると考えており、戦略の目的は膨大な数の起こりうる事象に対して準備し練磨することであると信じていた。

タップ・アウトしている対戦相手は《外科的摘出/Surgical Extraction》をプレイするかもしれない。緑青デッキを操る初対面のプレイヤーは、突然《山/Mountain》を出しあなたに《ショック/Shock》を叩きつけるかもしれない。 プロツアーチャンピオンである私の良き友人は、次のような愚痴をこぼしていたことがある。 地元のショップで、《勇士の再会/Heroes’ Reunion》3枚をタッチした43枚のデッキを使った子供に負けたというのだ。 (もしあなたがこのプロツアーチャンピオンを知っていれば、《勇士の再会/Heroes’ Reunion》が彼のデッキをどれだけ妨害するかわかるだろう。)

道筋は一定でないかもしれないし、100%の保証があるわけでもない。しかし、うまくいくMTGの戦略というものは、予測可能な結果をもたらすことを意図しているものだ。

さようなら、いままで魚をありがとう

MTGの戦略を理解できたように感じられただろうか? 答えがYesでもNoでも、私にとっては素晴らしいものだ。これは入門記事であることを意図している。が、同時にデッキの例や特定の手順を紹介することの挑戦でもあったのだ。

まだ疑問があって頭を悩ませているなら、それは凄い!

思い出してほしい。これはあなたのための記事だ。

今週は戦略について紹介した。来週は複数の戦略について紹介する。

また来週。