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[翻訳記事] MTG象限理論とは何か・そしてそれが働かないときにどうすべきか

原文

この文章はmanaleak.comに掲載されたWhat Is MTG Quadrant Theory, And What Do You Do When It Doesn’t Work? の和訳である。原文の掲載は2017年6月だった。


MTG象限理論とは何か・そしてそれが働かないときにどうすべきか

象限理論(Quadrant Theory)、それはMTGのカードを評価するための素晴らしいツールである。 ドラフトでカードの評価を決定する際について、ゴールド・スタンダードだと認められている。 MTGで新しいセットが発表されるたび、カードの質やピックの順番を決める際に、私はいつも象限理論を使っていた。 しかし、最近の数セットについて、時折象限理論の示すガイドラインから外れることがあるように思える。 それはなぜか。理由を説明する前に、象限理論とは何であるかを簡単に説明しよう。

象限理論とは何か

DevelopmentParity
WinningLosing

もともとはLimited Resourcesポッドキャストのホストである、Brian Wongが開発したものである。 象限理論は2013年5月に放送された、184回で紹介された。 簡単に言うと、ゲームの異なる4段階、つまり象限のそれぞれについて、カードがどのように動作するかを考えようというものだ。 4象限とは以下のものだ。

  • 発展 (Development)
    • 最初の数ターン、あなたが初期手札からカードをプレイしているような段階だ。
    • 欲しいのは、それほど高くないコストでゲームに影響を与えるカードだ。
  • 平衡 (Parity)
    • どのプレイヤーも特にアドバンテージを得ていない状態だ。 通常はどちらのプレイヤーも有益な攻撃ができないことによって起こる。 どちらのプレイヤーもデッキトップから回答を求めることになる。
    • 欲しいのは、膠着状態を打破するためのカードだ。
  • 優勢 (Winning)
    • あなたは有益な攻撃を行うことができ、対戦相手がそうでない状態である。
    • 欲しいのは、とどめを刺す手段だ。
  • 劣勢 (Losing)
    • 対戦相手があなたを攻撃できる状態である。
    • 欲しいのは、ゲームを膠着させる手段だ。

基本的には、できるだけ多くの象限でうまく動作するカードを沢山デッキに入れたいだろう。 もしそれが実現できれば、それは安定したデッキになる。 さて、この方法を使って、最近のカードを何枚か見てみよう。

《蟻走感/Crawling Sensation》 - イニストラードを覆う影

Crawling Sensation / 蟻走感 (2)(緑)
エンチャント
あなたのアップキープの開始時に、あなたは「あなたのライブラリーの一番上から2枚のカードをあなたの墓地に置く。」ことを選んでもよい。
各ターンに最初に1枚以上の土地カードがいずれかの領域からあなたの墓地に置かれるたび、緑の1/1の昆虫(Insect)クリーチャー・トークンを1体生成する。

発展(Development)

このカードは3マナなので、おそらくは速やかに唱えることができるだろう。 しかし、このカードは即座に盤面に影響を与えるものではない。 もし3ターン目にあなたがこのカードをプレイし、対戦相手が妥当なクリーチャーをプレイした場合、あなたは大きく出遅れることになる。 もしあなたが墓地を肥やし始めたいなら、それの役には立つだろう。 なにも派手なことではないが、そのための仕事はするカードだ。

平衡(Parity)

《蟻走感/Crawling Sensation》はここでとくに影響を与えるカードではない。 それはすぐに膠着状態を打破する役には立たず、効果が出るまで時間がかかるだろう。 しかし、数ターンがすぎれば、墓地の枚数とトークンの両方であなたに利益をもたらすはずだ。

優勢(Winning)

もし対戦相手をビートダウンし始めていて、勝利が手の届くところにあるなら、《蟻走感/Crawling Sensation》はダメダメだ。 すぐに追加のプレッシャーをかけることができるわけでもなく、あとになって与えるプレッシャーも微々たるものだ。

劣勢(Losing)

もし劣勢を挽回するために《蟻走感/Crawling Sensation》が必要だというなら、よほど運が悪かったんじゃないか。

まとめ

まとめると、《蟻走感/Crawling Sensation》は2つの象限でOK、でもほか2つの象限でダメだ。 デッキに入れたくなるカードではない。

《革新の時代/Era of Innovation》 - カラデシュ

Era of Innovation / 革新の時代 (1)(青)
エンチャント
アーティファクトか工匠(Artificer)が1つあなたのコントロール下で戦場に出るたび、あなたは(1)を支払ってもよい。そうしたなら、あなたは(E)(E)(エネルギー・カウンター2個)を得る。
(E)(E)(E)(E)(E)(E)を支払う,革新の時代を生け贄に捧げる: カードを3枚引く。

発展(Development)

《革新の時代/Era of Innovation》はたった2マナだ。 しかし、最初の数ターンはまったくなにもしないだろう。余分なマナを残しておくことはめったにないだろうから。 そしてもしこのカードを用いて追加のエネルギーや追加のカードが得られたとしても、盤面への影響はない。 これでは素晴らしいカードとはいえない。

平衡(Parity)

このカードは、素晴らしいか全く役に立たないかどちらかだ。 もし十分なエネルギーがあってカードが3枚引けるなら、このカードは完全に素晴らしい! しかしもしそうでないなら、アーティファクトか工匠を引くまで待つ必要があり、このカードはそれまで全く何もしない。 両極端だ。

優勢(Winning)

このカードはここであなたを真に助けてくれるものではない。 3枚のカードをすぐに弾ける状況でもないかぎり、あなたはクリーチャーをプレイすべきだ。

劣勢(Losing)

役立たず。 もし3枚のカードをすぐに弾けたとしても、すでに2マナ払っているので、それらを最大限に活用することはできない。 ほとんどの場合、もっと盤面を安定させるカードをプレイしたいだろう。

まとめ

このカードは酷い。せいぜい1つの象限で両極端であり、他のすべての象限で悪い。

では、次の例だ。

《這い寄る刃/Slither Blade》 - アモンケット

Slither Blade / 這い寄る刃 (青)
クリーチャー - ナーガ(Naga) ならず者(Rogue)
這い寄る刃はブロックされない。
1/2

発展(Development)

このカードはここでこそ輝く。 もし1ターン目に《這い寄る刃/Slither Blade》をプレイできれば、すぐに攻撃できてダメージを与えられる。

平衡(Parity)

《這い寄る刃/Slither Blade》はブロックされないので、盤面が膠着していても構わずにダメージを与えられる。 しかし、毎ターン1点のダメージでは、対戦相手に回答を探す時間を多く与えることになる。

優勢(Winning)

あなたがすでに対戦相手にかけている圧力に比べれば、それほど多くの圧力にはならないだろう。 しかし、ブロックされないことは間違いない。

劣勢(Losing)

ブロックされないことは無意味だ。1/2というステータスもゲームを巻き返す助けにはならない。

まとめ

このカードは発展象限以外では十分な影響力をもたないようだ。 ごめんね、《這い寄る刃/Slither Blade》。

3枚のカードの共通点は何か

さて、象限理論によると、これら3枚のカードはすべて極めて良くないカードだと見える。 だとするとこれらのカードをデッキに入れるべきではないということになる。 しかし実際のところ、これらのカードはそれぞれのドラフト環境でかなりまともで有力な戦力だ。 では、最後の例を見てみよう。

《死の頭巾のコブラ/Death-Hood Cobra》 - モダンマスターズ2017

Death-Hood Cobra / 死の頭巾のコブラ (1)(緑)
クリーチャー - 蛇(Snake)
(1)(緑):ターン終了時まで、死の頭巾のコブラは到達を得る。(このクリーチャーは飛行を持つクリーチャーをブロックできる。)
(1)(緑): ターン終了時まで、死の頭巾のコブラは接死を得る。(これが何らかのダメージをクリーチャーに与えた場合、それだけで破壊される。)
2/2

発展(Development)

このカードは発展段階においてかなりガチだ。2マナ2/2クリーチャーにこれ以上多くを求めることはできないだろう。

平衡(Parity)

2マナの割に、《死の頭巾のコブラ/Death-Hood Cobra》は平衡状態でもかなり強い。 接死を得る能力はより大きなブロッカーに対して攻撃に行けることを意味しているし、到達を得る能力は相手の厄介なフライヤーを止められることを意味している。

優勢(Winning)

《死の頭巾のコブラ/Death-Hood Cobra》単体で相手にとどめをさせるわけではない。 しかし、接死を得る能力があるので、攻撃は相手に通るか、よりタフネスの高いブロッカーを始末できるようになるだろう。

劣勢(Losing)

ここでも2マナの割に《死の頭巾のコブラ/Death-Hood Cobra》は強力だ、到達と接死によって、フライヤーや巨大クリーチャーを足止めすることが可能であり、ゲームに復帰するための時間を稼ぐことができる。

まとめ

おお! すべての象限で素晴らしいカードを発見することができた、 つまり、《死の頭巾のコブラ/Death-Hood Cobra》は極めて優先してピックすべきカードというわけだね?

違う。

《死の頭巾のコブラ/Death-Hood Cobra》はモダンマスターズ2017ではせいぜいプレイ可能なボーダーライン上のカードだ。

なぜこうなってしまうのか調べるため、Limited Resourcesポッドキャストの象限理論に関する回を聴き直すことにした。 第248回『象限理論再訪 (Quadrant Theory Revisited)』において、彼らは《幻影の天使/Illusory Angel》について議論していた。 そして、彼らはすべての象限で評価を決めることに苦労していた。

つまり何が起こっているのか?

これまで、《幻影の天使/Illusory Angel》が評価しにくいことを見てきた。 また、本来プレイアブルで良いはずのカードが、象限理論では低い評価になってしまうことを確認した。 さたに、象限理論では満点のはずのカードが実際には低いピック順になるケースも確認した。 それでは、先程取り上げた「良い」カードをもう一度見てみよう。

《蟻走感/Crawling Sensation》は、準備するだけの時間の猶予がある 環境 において、昂揚メカニズムやセルフ・ミルの《墓碑のゴーレム/Epitaph Golem》デッキと良い シナジー を発揮する。

《革新の時代/Era of Innovation》はエネルギーを生み出すカードが多い 環境 において、エネルギー戦略と シナジー がある。

《這い寄る刃/Slither Blade》は装備品やオーラ、パンプアップ呪文のたくさん入った超攻撃的デッキで シナジー があり、序盤の猛攻を推奨するような 環境 で強力だ。

《死の頭巾のコブラ/Death-Hood Cobra》は、モダンマスターズ2017の緑で推奨されているトークン戦略と シナジー がない。 また、この 環境 は遅く、カードアドバンテージが重要になるフォーマットである。 つまり、《死の頭巾のコブラ/Death-Hood Cobra》は安価であり、強力なクリーチャーと1対1交換が取れるものの、そこまで効果的でない。

次に、《幻影の天使/Illusory Angel》についてだが、このカードは絶対的に シナジー を必要としている。 このカードは他の呪文を唱えていないと唱えることができないのだ。

ここで、2つの単語が繰り返し出てきたことに気づいたのではないだろうか?

シナジーと環境

象限理論の通常の使用法においては、カード間のシナジーや、カードが使用される環境は考慮されない。 従って、4つの象限すべてで強いカードを探したところで、それですべてが明らかになるわけではない。 従来のリミテッドフォーマットにおいては、バランスの取れた一貫性のあるデッキを作成する上で象限理論は有効に働く。 そのようなデッキは殆どの対戦相手を叩きのめすチャンスをあなたに与えるだろう。 しかし、極端に速いか遅いか、あるいはシナジー重視のフォーマットにおいては、象限理論はそれほど有効に働かない。 なぜなら、それらのフォーマットではバランスの取れたデッキが最高のデッキとは限らないからだ。

では、伝統的でないフォーマットにおいて、我々はどうすべきか? ここで、それらの伝統的でないフォーマットにおいてどの象限が出現しやすいかを考慮し、それぞれの象限におけるカードの評価にバイアスを掛けることができる。 これが私がこの記事で言いたいことだ。

高速な環境においては、準備のためにかけられる時間はそれほど多くない。 従って、発展象限において良いカードに高い優先度をつけるべきだ。 また、優勢象限や劣勢象限になる可能性も高くなる。あなたが対戦相手より先に戦力を整えたり、その逆になるということだ。 従って、これらの象限も重要視すべきだ。

その一方で、平衡象限にはなりにくくなる。膠着状態でよく働くカードについては注目度を下げようとおもうだろう。 環境が早ければ速いほど、発展象限に向けてピックを歪めていく必要がある。 これによって《這い寄る刃/Slither Blade》はアモンケットのドラフトでプレイアブルになり、《発光の始源体/Luminate Primordial》のようなカードはギルド門侵犯のドラフトでプレイアブルでなくなる。

逆もまた真なりだ。 非常に遅い環境においては平衡象限で強力なカードを優先すべきであり、発展象限や優勢象限で強いカードはあまり重視すべきでない。 劣勢に強いカードについては考慮の余地が残っている。 なぜなら、ドローが良くなかったりして盤面が押されてしまうことは、リミテッドフォーマットならいつでも起こりうるからだ。

シナジーが重視される環境においては、ドラフトの方法論は全く異なるものになる。 各象限に注目するのではなく、カード同士の相互作用に注目すべきだ。 これは象限理論より少し(またはとても)複雑である。シナジー重視のデッキをドラフトすることについては、それだけで1記事かけてしまうだろう。

まとめ

  • 象限理論を使用することで、伝統的なドラフトフォーマットで機能する、バランスの取れた一貫性のあるデッキが作成できる。
  • 伝統的でないドラフトフォーマットにおいては、環境を整理した上で、どの象限を優先すべきかを判断する。
  • 高速な環境では、発展象限・優勢象限・劣勢象限を重視せよ。
  • 低速な環境では、平衡象限を重視せよ。
  • カードやフォーマットがシナジーに極めて依存する場合は、象限理論にこだわることなく、カード同士の相互作用に注意を払うべきだ。

この情報をどのように活かすだろうか? それぞれの環境が実際にどのようなものか分析し、各カードを適切に評価することを、なるべく早く始めてほしい。 他のプレイヤーより先に行うことで、あなたは確実にアドバンテージを得ることができるだろう。

読んでくれてありがとう。

George Miles