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[翻訳記事] 十分時間をかけた

原文

この文章は海外公式サイトに掲載されたTook Us Long Enoughの和訳である。原文の掲載は2017年2月27日だった。

モダマス2017の《滅び/Damnation》プレビュー記事。


よし。

プレビュー・カードは《滅び/Damnation》だ。

何か質問ある?

……。

……。

……。

お、質問があるのか?

何がそんなに時間かかったの?

再録の管理はときに難しい。 多くの場合我々はセットの開発に数年をかけることになり、印刷される1年以上も前にカードを確定させねばならない。 そしてまた、我々は製品間で需要のバランスを取らなければならない。

加えて、我々は再録にあたって受動的になる。再録セットの作業においては我々はトーナメント・シーンを注視し、どのカードに人気があるか市場調査を行う。 もっとも重要なのはコミュニティからの声に耳を傾けることだ。 これらの情報は、○○マスターズや他のセットに何を再録するかについての我々の議論を促進する。

《滅び/Damnation》の話はFrom the Vault: Annihilationまで遡る。 《滅び/Damnation》は最初このFrom the Vaultに収録される予定であった。 しかし、基本セット2015において《滅び/Damnation》を試してみることになった。 《滅び/Damnation》は基本セット2015のファイルに長い間残ることになり、その間にFrom the Vault: Annihilationを変更できる期間を過ぎてしまった。

基本セット2015をフューチャー・フューチャー・リーグで試している間、テーロスがリリースされた。 あなたは《群れネズミ/Pack Rat》がスタンダード環境に蔓延したのを憶えているかもしれない。 黒単信心が環境で最も強いデッキだと考えられていた。 当然、環境で最強のデッキを更に強化してしまうようなカードはリリースするべきでないと当時の我々は考えた。 そして基本セット2015から《滅び/Damnation》は取り除かれたのだ。

基本セット2015が完成した直後に、我々は《神の怒り/Wrath of God》効果の異なるデザイン空間をいろいろ試してみることになった。 結果としてマジック・オリジンには《衰滅/Languish》が収録された。 これによって、《滅び/Damnation》は他の場所に再録の機会を求めることになった。

短期間の間だったが、モダンマスターズ2015のファイルにも《滅び/Damnation》はあった。 しかし、モダンで《苦花/Bitterblossom》を解禁したとき、我々は《苦花/Bitterblossom》をこのセットに入れようと考えた。 《苦花/Bitterblossom》が環境に与える影響は未知数だったが、もしそれが環境を定義づけるようなカードであったなら、プレイヤーがそれを入手できるようにしたいと考えたのだ。

内部的には《滅び/Damnation》を何度も再録しようとしたのだが、様々な理由で取り除かれることになった。 しかし、それらの製品がリリースされるたび、《滅び/Damnation》を求めるプレイヤーの声はますます強くなっていった。 結局のところこれは魅力的なカードだということだ。 次元の混乱を最も象徴するカードであり、モダン・統率者・その他のフォーマットで非常に多く使われているのである。

モダンマスターズ2017のデザインが始まったとき、私はリード・デザイナーのSam Stoddardと会話をし、《滅び/Damnation》をセットに入れるべきだと主張した。 幸運なことに彼も同じ考えを持っており、《滅び/Damnation》は彼に重要なカードとして考えられていた。

モダンマスターズ2017においても《滅び/Damnation》の再録は挑戦的だった。 セットにはたくさんの全体除去が収録されているが、《滅び/Damnation》よりもセットのテーマに沿ったものは収録されていない。 たとえば《至高の評決/Supreme Verdict》はセットのテーマに沿っているが、このセットに入っていない。なぜなら《滅び/Damnation》とほとんど同じ効果だからだ。 《滅び/Damnation》はモダンマスターズに存在する必要があり、セットのテーマと関係なく印刷される必要があるのだ。 《滅び/Damnation》のミームは非常に楽しい。しかし私はそれに疲れてしまった。 ありがたいことにこの再録がうまくいったなら、それを休ませておくことができるはずだ。少なくとも、しばらくの間は。

セットのテーマについて

モダンマスターズ2017には、これまでの○○マスターズと少し違っている。 モダンマスターズ・モダンマスターズ2015・エターナルマスターズはどれも、10の色のペアとそれぞれに対応するアーキタイプからできていた。 例えば、黒緑のエルフ、白青のアーティファクトとか。

モダンマスターズ2017が最も大きく異なる点は、極めて多色推しのセットであるということだ。 特にこのセットは5つの友好色の組み合わせと、それらの持つ戦略を中心に作られている。

  • 白青ブリンク - ETB能力を持つクリーチャーとそれを再利用する手段
  • 青黒インスタント・コントロール - 戦場をコントロールする多くのインスタントと打ち消し呪文
  • 黒赤蘇生 - 蘇生を持つクリーチャーで絶えず攻撃する前のめりなデッキ
  • 赤緑展開力 - トークンの生成とそれらすべてを巨大にするカード群
  • 緑白居住 - ラヴニカへの回帰で登場した居住を使ってアドバンテージを得る

セットには友好3色(緑白青・白青黒・青黒赤・黒赤緑・赤緑白)や敵対2色のカードもある。 このセットでドラフトを行うと、多色のカードに自然と注意が行くことになるだろう。 それら多色のカードを唱えられるようにするため、このセットには健全な量のマナ補正カードが収録されている。 そこには土地のサイクル2つ(友好色タップイントライランド・ギルド門)が含まれる。

モダンマスターズ2017のデベロップ

このセットのリードデザイナーであるSam Stoddardは素晴らしいセットを作り上げた。 彼と彼のチームがデベロップに渡したセットには、すべての重要な構造が存在した。 私の意見では、Samのデザインでもっとも重要な特徴は、マルチカラー・セットの作り方にある。 彼らのチームは、友好色のペアが友好3色で協調して働くようなセットを作り上げたのだ。

私の最大の仕事は、Samの初期のビジョンを拡張し、さまざまな戦略がサポートされるようにセットを構築することだった。 マルチカラーセットの最大の課題の1つは、プレイヤーが2色と5色の両方をプレイできるようにすることだ。 あるときには、2色のデッキが非常に焦点を絞ったテーマを持つ。 例えば、緑白をドラフトすることにし、目についた『居住』カードとトークン生成カードを片っ端からデッキに入れるとしよう。 居住カードを残さずドラフトするために、緑白以外の色をドラフトする必要はない。 しかし、あなたはドラフト中強力な赤緑のカードを発見し、それを盤面に叩きつけたくなるかもしれない。 我々もそれが可能であることを望んでいるのだ。

3色のデッキを強化するためには、色のペアの戦略が重なるようにセットを作る必要があった。 各色について友好色のペア2つは重大な重なりを有している。 たとえば、青白はETB能力を利用し、緑白は居住デッキになる。 あなたが緑白青をプレイしているとき、そこには戦場に出るときにトークンを生成するクリーチャーがあるだろう(今週末にはさらにプレビューされる!)。 それらのカードは戦略同士の重なりをもたらし、あなたが3色デッキをプレイできるようにする。

最後に、4色や5色のデッキをプレイできるようにもしたかった。 これはどういうことかというと、このセットはあなたが自分でシナジーを見つけることができなくなるような超強力テーマばかりではないということだ。 赤黒のデッキでしか使えないカードがたくさんある場合、仮に赤と黒の両方をプレイしていても、4色または5色のデッキでそれらのカードを使用するのは難しい。 これはマナ補正の話でもある。 私が試したトライランドは、方程式のある1つの部分に過ぎない。 モダンマスターズ2017のマナはアラーラの断片のマナよりもはるかに強力だ。 あなたのテーブルにいる1人の人間が、マナ補正カードをすべてドラフトしようとしてもできないほど十分だ。 誰もがその人物を知っている。 時に、その人物は私だ。

私はモダンマスターズ2017を作ったことを信じられないほど誇りに思っている。そして、それが3月17日にリリースされ、あなたがセットすべてを堪能するのが待ちきれない。