原文
この文章はChannel Fireballに掲載されたThe Power of Opportunity Costの和訳である。原文の掲載は2015年10月8日だった。
マジックから学ぶことができる最も強力な考え方の1つが、機会費用に基づく判断の評価である。意思決定において、このスキルを学んだ人間とまだ学んでいない人間の間にある違いは膨大だ。これはまさに人生を変えるレッスンであり、いかに幸福のためにマジックを用いることができるかという1つの良い例でもある。
機会費用の力
すでに気づいているかもしれないが、強いデッキの大多数は必要最低限度の枚数でできている。これはなぜだろうか。 多くのカードを用いることに幾つかの利点があるのはたしかだ。しかし、デッキを最小限の枚数にすることには強い数学的理由が存在する。実のところ、これは機会費用という経済の原則に基づいている。 機会費用の考え方においては、すべての新しいカードと、最良のカードとの比較を行うことになる。
機会費用 : 相互に排他的な選択肢から選ぶとき、既存の最も良い選択肢の価値
デッキの中で最良・第1位のカードと、それ以外のカード、あなたがドローしたいのはどちらだろうか。 第61位・第70位・第100位のカードは、あなたが最良のカードを引く可能性を希釈する。一般に、使うカードが多ければ多いほど、最良のカードを引く可能性は小さくなる。 したがってデッキを最小限の枚数にすることは数学的に意味があるのだ。
例をあげよう。あなたのデッキの主要な目的が《原始のタイタン/Primeval Titan》を唱えることだとする。つまりこれが最良のカードだ。 殆どの構築フォーマットでは60枚の中で4枚しか《原始のタイタン/Primeval Titan》を使えない。15回に1回引き込むことができることになる。
しかしカードを追加しデッキを120枚にした時、タイタンを引ける確率は30回に1回、半分にまで減る。 《原始のタイタン/Primeval Titan》はバケツに落ちた一滴の水のように消えてしまうだろう。
デッキを61枚にする影響は、120枚にすることほど劇的ではない。しかしそれはデッキのアイデアを測定可能なレベルで希釈してしまう。 故にデッキビルダーは数学と経済学の観点からデッキの枚数を最小限にするのだ。
幸福の機会費用
機会費用に対する評価は、同様に日々の意思決定すべてに適用できる。減算を通じて、進歩のダークサイドを抱きしめる時間だ。
ただの物はない。すべてのものにコストはある。特に金と時間だ。
あなたのすべての行動は、あなたが行うことができる最良の行動と比較されなければならない。 あなたのすべての支出は、あなたが支払うことができた最も有益な品物と比較されなければならない。
重要でないものは排除され、唯一の最も有用な進化だけが残る。
機会費用についての理解は、他者を理解し対話する方法を変化させる。 あなたは彼らの時間、そして彼らの機会費用を尊重するようになるだろう。 あなたが彼らの時間やお金を要求する場合には、彼らがそれをしなかった時に行うことができる最良のものに匹敵するような公正な対価を提供するようになるだろう。 あなたがタダで何かをお願いするとき、あなたは真にタダであるものなどないことを知っている。 彼らの時間は考慮されるべき物事であり、その貴重な資源を彼らがどのように割り振るかは尊重されねばならない。
これはデッキ制作から学ぶことができる強力なレッスンだ。 削りこむこと、そしてそれを実生活にいかに役立てるかを学んだとき、あなたは強力な鋭さを身につけることができる。 今やあなたはあらゆるコストを考慮し、無情な決定を下すことになる。それによって、より集中した、意味のある、有意義な人生を得ることができるのだ。 一度身につけてしまえば、二度と忘れることはない。 これが機会費用を理解することの力だ。
引き続き、『幸福のためのマジック』をお楽しみに。